クロ

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 真っ白なノートを用意した。元旦から日記を書こうと思ったからだ。私は25歳、小学生の夏休みに絵日記を書いた記憶しかないが今年こそ日記をつけようと線の入ってない真っ白なスケッチブックを購入した。私は絵が得意なので絵も描いていけたらいいと単純に考えたのがきっかけだ。真っ白なスケッチブックは表にネズミの絵が描いてあって、今年の干支を表していた。  新しいことを始めるのは何事も最初が肝心だ。私は今日の昼間に愛犬のクロの散歩に行ったことを記そうと思った。クロはラブラドルレトリバーだ。真っ黒な身体をしている。クロと行く公園は家から歩いて15分くらいのところにあって、グラウンドがある大きな公園だ。アスレチックみたいな木で出来た遊具もある。近所には病院があるので、そこに通っているらしき患者さんや入院患者さんも散歩している。パジャマで外出していいのだろうかと何時も首を捻る。    私は毎日の散歩の時に会う、ガッチリとした体格の男の子のことを書こうと思った。その子と、こんにちはと挨拶を交わすこと、クロがワンワンと吠えかかると困ったような顔をしたこと、私がすみませんと謝ると白い歯を見せて笑ってくれたこと。何歳くらいなのだろう。高校生くらいか。恋愛対象ではない。10歳近くも歳が離れていれば当然だろう。  私は名前の知らない男の子の絵を描いて横に今日おきた出来事を書く。自然と笑みが零れる。男の子はまさか私が絵を描いているなんて思わないだろう。黒い髪に白い肌、かなりのイケメンだ。女子たちに人気があるに違いない。何時も一人でベンチに座っているってことは彼女はいないのか。どれだけ長い時間公園にいるんだろう。
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