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得体のしれない者
次第に、私達と由美子達の距離が近くなってくる。街灯もなく畑が広がるだけの道なので、距離感を図るのは先程から見ている懐中電灯の光のみ。しかし、明るい月明かりでいい加減由美子達の姿が見えてもいいのだが、何故かよく見えない。
司は由美子達を懐中電灯で照らす。
「おい!大丈夫か?」
由美子達は、相変わらずグルグルと光を回しながらこちらに来ている。光の回り方から想像すると、右手で懐中電灯を持ち横に大きく円を描くように回しているようだ。
ざざざっ!
走っていた司が急に止まる。
「え?どうしたの?」
「ヤバい逃げるぞ!」
司は早口にそう言うと、直ぐに踵を返し私を引っ張ると凄い速さで走り出した。何が何だが分からない私は、司に引っ張られた瞬間後ろを・・由美子達の方を見た。
「‼」
それは私達のすぐ後ろにいた。
真っ黒な人間。
ソレを見た時、私はそう思った。
その真っ黒な人間が懐中電灯を右手に持ちグルグル回しながら走っている。それも全速力に近い速さで。
「きゃ~‼」
「落ち着け!落ち着いて全力で走れ‼」
司はそう怒鳴りながら私の手をしっかりと握る。その力強い司の手が多少でも私の気持ちに影響したのか、分からないが無我夢中で走る私は、ドラマの様に転ぶこともなく何とか祖母の家まで来ることが出来た。
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