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「これからどうするの?」
「・・・車で逃げるって言っても、鍵は家の中だし。アイツが出て行ってから取りに行くしかない。でも、俺達だけで逃げられないよ。アイツらも一緒に行かなくちゃ」
「そ、そうだけど、一旦ここから離れて助けを呼ぶって言うのは・・・」
「それもいいけど、誰が信じるんだい?真っ黒い奴がいて友達がいなくなったなんて話。俺達が頭おかしくなったと思われるだけだよ」
「じゃあどうすれば・・・」
「シッ出てきた」
手に懐中電灯を持った黒い奴は、ゆっくりと辺りを見回すように家から出ると庭をうろうろし始める。私達を探しているようだが、私はその様子を見て少し違和感を感じた。本当に私達を探し出したいのなら、もっと必死になって探すはず。しかしあの黒い奴は、母屋の方に入ってから出てくるまでが早かったし、外に出て建物の裏など隅々探す事をしない。
(変ね・・・)
私は隣で一緒に息をひそめながら黒い奴を見ている司の方を見た。暗がりの中でも、司の額から流れ落ちる汗が見える。
暫くすると、黒い奴は元来た道の方へ歩いて行ってしまった。
「ふぅ~」
極度の緊張から逃れられた安堵感からか、二人して大きく息を吐いた。
「どうする?由美子達は?ここから逃げないと!」
緊張が溶け、次に恐怖と焦りを感じた私は、矢継ぎ早に司に言った。
「落ち着け。ここで、闇雲に動いてアイツに見つかったら元も子もないだろ。落ち着いて行動しよう。まず考えるんだ。いいか、まずアイツが何者なのか・・・心当たりないか?」
「そんなの・・・」
パニック気味の私に考えろと言われても冷静に考える事等無理だ。しかし、司の言うようによく考えてから行動したほうがいいのも分かる。私は必死に自分を落ち着かせ考え始めた。
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