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大切な部屋
「・・・・わぁ・・・・」
微かだが、風に乗って声が聞こえた。
私達はハッとして顔を見合わせる。お互いの頭の中には由美子達の最悪なケースがよぎったと見える。司は唇を強く結ぶと
「焦るな・・・大丈夫だ・・ここにじっとして時間が経つのを待つのもいいけど、やっぱり合流したほうがいい。何か…何かないか・・・」
司は、自分に言い聞かせるように言い頭を抱えた。
携帯が二時を表示した時、考え込んでいた司が話し出した。
「お前のお祖母ちゃんが言っていた事。影を踏まれてしまうと、今度は自分が影になる・・・これって・・・・何か影鬼に似てないか?」
「影鬼?」
「知らない?影鬼とか影踏みとも言うんだけどさ。俺小さい頃よくやったよ。何人でやってもいいんだけど、一人鬼がいるんだ。その鬼が、皆の影を踏むために追いかける。踏まれたくないみんなはダッシュで逃げるんだけどさ。鬼に影を踏まれたら、踏まれた奴が今度は鬼になる」
「へぇ~。そんな遊びがあるの。知らなかったわ。でも、影を踏まれたくなかったら、建物の影とかに入っちゃえばよくない?」
「そう、確かに影の中に自分の影を隠せばいいんだけど、それだとフェアじゃないだろ?だから、入ったとしても時間制限があるんだ。十秒だけいられるとかね」
「ふ~ん。確かに、お祖母ちゃんが話してくれたのと似てるようだけど・・・司が遊んでたその影鬼って、その鬼に勝つには・・」
「逃げ切るしかない」
絶望的な感じがした。
あんな奴からどうやって逃げ切りながら、由美子達と合流しこの村から脱出したらいいのか。
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