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「あっ。ちょっと待って。お母さんに聞いてみる。何か知ってるかもしれないから」
「あ、ナイス!電話してみて!」
握りしめていたせいで汗でびっしょり濡れた携帯で母親に電話をかける。もう寝てるだろうが、そんな事関係ない。長い間呼び出し音が鳴っていたが、ようやく不機嫌な声の母親が出てくれた。
「あ、お母さん?もしもし?」
「何?どうしたのよ・・・」
「あのね、黒い奴!黒い奴が出て!」
母親の声を聞いた私は安心と焦りが入り交じり、上手く話すことが出来ない。
「黒い奴?・・・黒い・・・あんた!無事なの!一人?友達は?」
突然母親の声色が変わった。驚きと恐怖の混ざったような声だ。
「うん。無事・・・今、司と一緒にいる・・・お母さんどうしよう」
「まず、落ち着きなさい。落ち着いてお母さんの話をよ~く聞くのよ」
「うん」
「昔、お母さんが中学生の頃お祖母ちゃんから聞いた事があるの」
母の話はこうだ。
母が中学生の頃、あの部屋を偶然見つけてしまった。(あの祭壇がある部屋の事だ)母親に、つまり私の祖母に聞いてみると
「この部屋は大切な部屋」
と言われたらしい。勿論その答えに対し「ああそうですか」と簡単に受け取ることは出来ない。産まれ育った家の中に、自分が知らない部屋があったのである。母は、しつこく祖母に聞いたらしい。それでも中々話してくれなかった祖母だったが、ついに根負けしたのか話してくれたと言う。
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