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私は何となく落ち着かない気持ちだったが、司は、旅行自体は楽しみだったらしく楽しそうに私やみんなと話をしていたので安堵した。早朝に出発したのだが、涼しかったのはわずかな時間ですぐに車のエアコンをフル活動するほどの暑さがやってきた。
途中、スーパーで食料と花火を大量に買い込みいざ祖母の家へ。
三時間ほどして、幼い頃の記憶とほぼ変わっていない田舎の景色が車の窓から見えてきた。運転しているユウに道を教えながら、私は懐かしい景色に興奮していた。高い建物もなくなり、見渡す限り山が広がる。次第に、人の手が入っていない荒れ果てた畑が見えてきた。畑を囲むようにつながった細い道をくねくねと車で走る。今日は綺麗な満月が空に浮かんでいるので、村全体が薄いライトで照らされているように見える。ユウも運転しやすそうだ。
「なんかすごい所よね。私もう自分がどの方向に向かってるのか分からなくなっちゃった」
由美子が面白がりながら言う。
「俺の父親の実家もこんな感じだよ」
司がそれに答える。私にとっては初耳だった。
少しさびしさを感じながらも、運転席の方に身を乗り出しながら道を教え続けようやく祖母の家が見えてきた。
祖母の家は、村の中でも一番大きく土地も広く持っていた。母が言うには、小さい頃はお手伝いさんが数人家にいたという。
しかし、跡継ぎがいないためお爺ちゃんが亡くなった後は農家を辞め田畑を人に貸したりして、祖母はその収入で暮らしていた。
何でも祖母は、母を産んだ後に病気になりそれ以来子供が産めない体になってしまったらしい。その事でお姑からかなりの嫌がらせを受けたと聞いている。
「凄いでかい家だなぁ」
ユウが感嘆の声を出す。
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