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真実
老人の家の中に入り、最初に老人に会った部屋の中で私と司は老人と向かい合う形で座っていた。
外は眩しいくらいの晴天だ。数時間前の暗闇が嘘のようである。
「あのおじさん。アレは一体?」
「・・・・・昨日話したのは覚えてるか?あの黒い奴は俺の弟だという事を」
「はい」
「俺はね。あんたらが言うように、弟を見殺しにした男だ。普通だったらそんな事をしたこの村にいつまでもいないだろ?でも俺はここに居続けた。理由は、いずれ弟が俺を捕まえに来ると思ったからさ。・・・あの時、遊んでいた時俺は鬼だった。でも、弟が沼になんか落ちなければ簡単に弟を捕まえていたんだよ。そうすると次は、弟が鬼だろ?だから、あの黒い奴が出て人を追いかけると言う噂が流れた時、直ぐにそう思ったんだ。俺を捕まえに来るだろうってね」
「今まで、弟さんは来たことあったんですか?」
「いや・・・何故か来ない。俺が沼の所に行っても来ないんだ」
「何で?」
「さあな。あの時、あんたが沼から離れて行った後あの子らが現れた。楽しそうに遊んでいるんだ。だから、俺も一緒になって遊べば、あの日からの何十年と言う苦しみから解放されるんじゃないかって思ったんだ。でも、あの子らは俺じゃなく、あの兄ちゃんを「鬼」として選んだ・・・」
「そうだ!そう言えば何で細川さんが黒い奴になりきってたんだ?」
「分からない。あっ!由美子は?ユウ君は?」
現実離れしたものを見たせいで、忘れてしまっていた由美子達の事を思い出した。
「探しに行こう!」
私と司は、老人を置いて急いで部屋を飛び出し祖母の家に走った。
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