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「は?じゃああの黒い奴は、その細川っていう奴だったのかよ」
ユウは憤慨している。
ユウの話では、あの時玄関で、由美子が襲われたと思い無我夢中で黒い奴に向かって行ったらしい。向かって行ったのはいいが、みぞおちに拳を一発入れられ呆気なくダウンしてしまったと言う。
「今まで生きてきた中で、一番の恐怖だったわ」
あの時の恐ろしさが蘇って来たのか、由美子は震えながら話す。
由美子の話では、黒い奴を見て腰を抜かした後這いつくばりながら逃げようとしたが、突然頭に激痛を感じ、その後の事は記憶がないらしい。
「でもさ、細川さんはどうしてそんなことしたのかしら」
「ん~どうしてなんだろうな」
バァァン‼
玄関の方で大きな音がした。
四人とも飛び上がって驚き、玄関の方を見る。
バタバタと大きな足音を立てて入って来たのは、私の母だった。
「大丈夫⁉無事⁉」
母親は、ぼさぼさの髪に引きつった青い顔をして部屋に入って来た。
驚いた顔をして自分を見る四人を確認した母は、ホッとしたようでその場にへたり込んでしまった。
「お母さん!」
私は母の元へ寄り背中をさすった。
「良かった~みんな無事ね」
「はい・・・すみません」
「ごめんなさい」
「申し訳ない」
それぞれが母に謝る。
「もうびっくりしたわよ。夜にあんたから電話貰ったでしょ?それからすぐに家を出ようとしたんだけど、家の電話と私の携帯に何度も何度も電話がかかって来たのよ。出ても何も言わないし、すぐに切れちゃう。あんたに電話したけど繋がらないし・・・」
「電話が・・・」
「そう。家を出ようとすると、家の電話が鳴るのよ。本当に参ったわアレには。だから来るのがこんなに遅くなっちゃったの。それより、どうしたの?何があったの?説明しなさい!」
不思議な事に、人は極度に心配し、無事を確認すると安心し、次に怒りが出てくる。今の母親がまさにそうだ。
「うん・・実は・・」
私は、母が言う電話の件も気になったがこれまでの経緯を詳しく話した。
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