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話を聞いていた老人は、じっと母親を見ていたが結んでいた口をより固く閉じ黙ってうなずいた。
ソレを見た母親は、携帯を取り出しながら部屋を出て行く。部屋に残された私達は、何が何だか分からずにその場にいたが、電話が終わった母親が戻り
「さ、あんた達も今回の事話さなくちゃいけないんだからね。しっかりしてよ」
と言うと、部屋から出て行った。
私はどういうことなの聞くために母親の後を追う。他の三人もその場にいずらかったのか私の後について来た。
「ちょっと待って!お母さん」
母は、家の外に出て空を見上げていた。
「ね、どういう事なの?何が何だか訳が分からないよ」
私に背を向け空を見ていた母は、クルリと振り返ると話し出した。
「あんたにはずっと言わないつもりだったのよね。知らなくてもいい事だと思ったから。でも上手くいかないものね。昨日の夜、あんたから電話があった時、お祖母ちゃんが話してくれたこと言ったでしょ?」
「うん」
祖母が幼いころ近所の人と遊んでいる時に、沼に落ちたしんちゃんの事とあの部屋の事だ。
「亡くなる間際にね、お祖母ちゃんが話してくれたの。あんなに口の堅いお祖母ちゃんが・・・自分の死期が近いのを悟った人間と言うのは固い口を柔らかくしてしまうのかしらね」
母は、寂しそうに言った。
「そう言えばあの人・・・健一さんて言うんだけど、健一さんから聞いたって言う話、あんた教えてくれたわね」
「うん。しんちゃんを見殺しにしてしまったって言ってた」
「そう。それね、見殺しじゃなくてあの人・・・しんちゃんを殺したの」
「は?」
「え?」
「殺した・・・」
これにはみんな絶句してしまった。
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