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「ど・・どういう事?」
「お祖母ちゃんの話だとね、沼に落ちてしまったというのは本当らしいの。でもここからが違う。沼に落ちたしんちゃんを健一さんは助けた。泥だらけになって泣き叫ぶしんちゃんを何とかなだめようとしたけど泣き止まなかった。そりゃそうよね。驚いちゃったのよ。まだ小さい子だもの。その時健一さんは思ったそうよ。このまま泥だらけになったしんちゃんを連れて家に帰ったら、両親に叱られるって。・・・・それで、その沼の近くで首を絞めて殺しちゃったんだって。その遺体は、沼の中へ・・・」
「ちょっと待って、どうしてお祖母ちゃんはそこまでの事知ってるの?」
「見てたそうよ」
「⁉」
「だから、健一さんに全てを話してきちんと罪を償いしんちゃんを供養してほしいって、言い続けたそうよ。でもあの人はそうしなかった。そうしない代わりに、結婚もせず一人で村から出る事をしなかったのね。・・・これからどうするかしらね」
あの老人は、弟を見殺しにしたと言った。
それも重大な事だと思うが、自らの手で弟を殺したとなるとまた別の問題だ。
蝉がうるさく鳴き始めた。
じりじりと照り付ける太陽が姿を現した時、遠くの方からパトカーのサイレンが聞こえてきた。母は、警察に連絡したようだ。
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