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私は、細川が沼の中に引きずり込まれていく様子を思い出した。
アレは、幻なんかじゃない。
黒い影の子供達。
楽しそうに遊んでいる子供達。
一体あれは何だったのか。
そう考えてみると、あの村に来た若者たちが帰ることなく沼の中から見つかったのも、あの子達が関係しているのではないかと思えてくる。
そして、健一さんはいつか自分があの子供達に捕まるのを望んでいたのではないか。だから「今回も駄目だった」なんて呟いたのではないか。
そう思えて仕方がない。
司は、あの事は忘れてしまいたいらしく
「余りの恐怖に、耐えられなかった俺達が見た幻影だよきっと」
等と言っていた。
司がそう思いたい気持ちは分かる。細川さんに殺されそうになった恐怖と、目の前で沼に沈んでいく様を見れば、自分の心を守るためそう思うのだろう。なので、私はそれ以上は何も言わなかった。
まだ、しんちゃんは無邪気にあそこで遊んでいる。
他の黒い子供の影が何なのかは分からない。
しかし自分もそうだったが、子供というのは、知らない子でも大人と違い仲良くなって遊んだりする。それと同じで、いつの間にか集まった子供なのではないだろうか。そして、成長するにつれその無邪気な心を忘れた大人が出来上がる。
「子供の頃か・・・」
私は夏の太陽が照り付ける中、ガードレールに隠れたり、道路を縦横無尽に走り回ったりまるで、影鬼をしているかのような黒い子供達が見ながら、小さくつぶやいた。
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