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この部屋・・・・・
すっかり忘れていた。
この村では年に一度、豊作を願い村人全員参加の祭りが行われる。
村の中心に櫓が組まれ朝まで火を焚き続ける。村の男達の太鼓の音に合わせ、櫓の周りを女達が回りながら踊る。私も小さい頃お祖母ちゃんと一緒に見様見真似で踊ったのを覚えている。踊りが終わると、それぞれの家から持ち寄った料理を皆で食べる。何処にでもありそうな祭りなのだが、何回か参加していたうち一度だけ不思議なものを見た。
祭りが終わり、櫓の番をする人を残しみんな家路についた。
私も、祭の高揚感を押さえながら布団に入り眠りについたのだが、夜中何時ごろだったろう。トイレに行きたくなり目が覚めた。
真っ暗な廊下を歩きトイレに向かっていたはずが、寝ぼけていたんだと思う。トイレとは反対方向に行ってしまったのだ。
慌てて戻ろうとした時、何やら話声が聞こえてきた。
こんな夜中に誰が話しているのかと気になり、足音を立てないようそっと話声がする方へ行って見た。
(なに?ここ)
家の中は、目をつぶっていても歩けるほど熟知していたはずの私だったが、今、目の前にある部屋が何の部屋かすぐに分からなかった。何故わからなかったのか。
(そうだ。ここは荷物がたくさん置いてあったんだ)
その場所には、段ボールがうず高く積みあがっていたのを思い出す。
(こんな所に部屋があったんだ)
その話声は、その部屋の中から聞こえている。
私は何を話しているのか気になりドアの近くまで行って見た。すると、プンとかび臭い匂いが鼻を突く。
(変な匂い)
かび臭い匂いを我慢しながら、そっと少しだけドアを開け覗いてみる。
(なにあれ・・・)
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