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肝試し
「着いた~!」
「温泉!最高!」
「ハハハ。まだ入ってないじゃん。気が早いな」
由美子たちは楽しそうだ。
私も、折角の旅行を楽しみたかったので、あの部屋の事は考えないことにした。
何件か温泉を堪能し、満足した私達は日が沈んできたのをきっかけに祖母の家に帰る事にした。
一度行っただけでは覚えられないのだろう、祖母の家までの道をユウに教えながらようやく家に着く。
「あ~楽しかった!温泉気持ちよかったね」
「そうだね。明日も行こうよ。疲れ取れるからさ」
「ハハハ。年寄り見た~い!」
テンションの高い由美子達と違い、車から降りた司は、その場で何か考え事をしているように見えた。何気なく近くにより小声で
「どうかした?」
と聞くと、今車で走って来た方向を見ながら
「ん~。ここって、人いないんだよね?」
「うん。お母さんからはそう聞いてるけど・・・なんで?」
「・・・明かりが見えたからさ。人がいるのかなって思って」
「街灯か何かを見間違えたんじゃない?きっと気のせいよ」
「そうか・・・」
納得していない司を、家の中に促しながら私はうすら寒さを覚えていた。
私は嘘をついた。この村に街灯はない。では、司は何の明かりを見たのだろうか。
不安はあったが、家に入り由美子と台所で騒ぎながら夕食を作っているうちに私はその事を忘れて行った。
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