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「しっかりしろよ。いい加減この現場は危険なんだ。少しの油断が命取りになるんだぞ。」
「はい、気を付けます。」
「お前みたいな日雇いは居ても居なくても変わらないし、別に代わりはいくらでも居るんだよ。そういうこと分かってんだろ?」
一般的な企業では確実にパワハラで訴えられそうな台詞を堂々と投げ掛けられる。
この上司の言っていることはもっともなのだ。自分はこの建設現場で日雇いで働いているため、上の判断で明日からは来られなくなるかもしれないし、自分のような立場の人間は技術大国・日本でも大量にいるから、代わりになる人間はいくらでもいるのだ。
自分自身も好きでこのような生活をしているわけではない。
高校卒業後、一旦は企業に就職したものの、社内での人間関係がうまくいかず、またそれを何処かに相談できるわけでもなく、早期退職に追い込まれてしまった。その後、再就職を試みるも、断念。特にこれといった特徴があったわけでもない自分を雇ってくれる人間味のある企業などはなかったのだ。そして現在、今のような日雇いの建設現場、コンビニのアルバイトを繰り返し、何とか生活を続けていた。
「とりあえず、明日の飯のためにしっかり働け、クソが!」
聞き流していた罵詈雑言がやっと終結し、去っていた。
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