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一族の帰還
ようやく実家の家に着くと三人は感嘆の息を漏らしていた。
どうやら、三人には実家の大きさだとか話していたのだけどうまく信じてもらえなかった。
彼の実家はかなり立派なもので、家は古い瓦の家で右の方には農業をやるための農耕具等の機械等を納める倉庫が置かれていた。
ガソリンなどは農作物を納品した後に必ず、ガソリンスタンドに寄って大量に仕入れて行くのだ。
そして、左の方には神社に続く道なのか木の柵と木で出来た裏口が付けられていた。
その周りを漆喰で出来た時代劇のような塀が立っていた。
入り口は立派な門になっていた。扉のない門が。
「おお……」と影蠹が声を漏らしていた。
そして、霧蠹は何か納得したような顔をしていた。
「本当にお偉いさんだったんだ…」って失礼ながらも言う妻に洋輔は苦笑いをしていた。
すると、連絡を受けていたのか父親と同年代のような女性が顔を出してきた。
「洋輔!おかえり!あの葉書届いたんだね!」と大声で叫んでると同時に彼が出迎えようと車から出た。
瞬間、歓迎のハグをされてしまった。
姉の感激の涙に理由の知らない彼はただされるがままだった。
「姉さん!そんなに寂しかったのかい?」
そんな他人事みたいな言い方に彼女は即座に我に返り姉は慌てて平静を装った。
「あ…ごめんなさい……あの事があって以来会ってないんだもの。寂しく感じるもの無理ないわね」
慌てて繕う彼女の言葉を聞いた二人は興味ないフリをしながらも心の中では違和感を感じて、ソッと左右の扉を使って二人は姉の前に姿を現した。
それに釣られて妻も車から出た。
「ああ、これは恥ずかしい所を見せてしまったね」と言いながら涙を右手で適当に拭ってから自己紹介をした。
「初めまして、洋輔の姉 沙惠と申します」と改まったような感じで言うと、妻は慌ててお辞儀をしてその後に霧蠹も同じように丁寧にお辞儀をした。
影蠹は軽く会釈をしただけだ。
それで姉は幸せな家族という光景を見て微笑ましい表情に変わった。
「幸せに暮らしていたんだね…姉として嬉しいよ」
そう言うと、彼は照れ臭そうに左手で頬を掻いていた。
「ああ、彼らは僕の妻と長男の影蠹、次男の霧蠹です」
やはり、家族の前なのかつい自称を口にしてしまうが何の違和感もなく家族を紹介した。
「どうも、お世話になってます…お義姉さん」って最初に言ったのは妻だった。
それに続いて影蠹が「うっす」と小さく挨拶を言い、霧蠹は「ボクは霧蠹です。お世話になります」と丁寧に挨拶をした。
「それじゃあ、妻と子供達をよろしくお願いします。僕は荷物を片してから行きますから」って言いながら、トランクを開けていた。
その中から最初に妻達の旅行バックを取り出した。
それを見て三人は振り返りながら「そうね…ほら…」と言ってから自分の旅行バックを受け取った。
最初に妻が取り、影蠹が無言のまま受け取ろうとしたけど先程から見る勝手口を見て目の前にいる父に問いかけた。
「あれって何処に繋がってるんだ?」
「あれな、さっき見た神社に繋がってるんだ。僕の家はなあれをずっと管理してるんだ先祖代々からな」
そう言うと、彼は少し目を見開いてから「後で行っていいか?」と告げたら彼は「お昼食ってから行こうと思っていたから」と一緒に行くという意味で話してきた。
それで影蠹は迷うよりましだと思い素直に頷いた。
そして、自分のを受け取ってから家に向かった。最後に霧蠹は何も言わずそそくさと受け取って行った。
(あいつも話を聞いてるはずだから言わずともついてくるだろ)と素直に言わない次男坊に苦笑いをして実家のために持ってきたガソリンを倉庫に運びこんでいた。
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