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私と僕の成長日記2
「ただいま」
ユウキが市営住宅の一室のドアを開けると、母親のアスカがユウキの格好を見るやいなや慌てて近づいて、ユウキのボロボロの姿を見て瞳に涙を浮かべた。
また、イジメられてしまったのか、そう思うとアスカはソッとユウキを抱きしめた。
「お母さん、痛いよ」
それでもアスカは抱きしめていた。自分の息子がこんなに痛い目を見た姿は親として辛いだけだった。
アスカはシングルマザーでユウキの今の唯一の親だった。結婚もしていない。
子供を作ってしまい、アスカの夫となるはずだった男はすべてを無責任に捨てて逃げ出したのだ。
結婚する度胸が、ユウキを育てる甲斐性がなかった。だからこそ、アスカにとってユウキは唯一の大事な子宝なのだ。
「あ、ごめんね。少し強くしすぎたわね」
今頃、ユウキの言葉が頭に入ったアスカは抱きしめるのを止めて真剣な眼差しで言った。
「誰にやられたの?」その声には怒りの感情も入っていた。しかし、ユウキの反応はアスカの想像の真逆だった。
「うん、中学生の人たちにちょっと蹴られたんだけど、下駄を履いたお兄ちゃんに助けてもらったんだ。すごいカッコイイ人だった」
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