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雪山に足を運んだ男二人がいた。仮に彼らを、AとBとしよう。
Bは途中で怪我をしてしまって、山小屋に着く頃には瀕死の状態だったんだ。
苦しむBを庇うように、Aは何度か様子を見て来ると言って、小屋の外へ出て行った。でも、本当は様子を見に行っていたんじゃない。
外に隠しておいた食料を、自分一人で食べていたんだ。Bにあげても、もう彼は死ぬだろうと見切りをつけたんだろう。
Aの予想通り、結局Bは死んでしまった。Aはその死体を小屋の外の雪の中に埋めた。
ふと、Aが目を覚ますと、隣には――埋めた筈のBの死体が横たわっていた。まるで這い出して来たみたいに、その身体には雪がこびりついていて、ドアの方から溶けた雪の湿った道が出来ていた。
Aはすぐさままた埋め直した。
ところが暫くして、また目を覚ますと、Bの死体がそこにある。これは尋常じゃないと思ったAは、自分が映るようにカメラをセットすると、また眠りについた。
次に目を覚ました時、やはりBの死体はそこに横たわっていた。何度埋めても、彼は此処へ戻って来る。Aは恐怖に慄きながらも、恐る恐るカメラの再生ボタンを押した。
そこに映っていたのは、立ち上がって小屋の外に出た後、Bの死体を掘り起こして自分の横に横たわらせる、A自身の姿だった。
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