織姫は社畜に戻れない

プロローグ

「織緒サン、織緒サーン」

　これは職場の後輩のダグラスだ。黒く焼けた肌とふくよかなボディ。白い布を多く織る織場では存在感が百倍増しになって見えるくらい。私をさっきから呼んでいるような気がするけど、まぁいいや。

「ボーッとシナイデ。マダ、作業ノコッテル」

　私は織姫の織緒。遠く離れた恋人の彦星と会えない私は今、絶賛理不尽と戦っていた。

　あぁ、今すぐにでも会いたい。好きな男のことが頭から離れない。

「織緒サーン、モウ、イイ加減ニシテヨ」

「アナタホント使エナイワー」

　愛おしい気持ちが溢れ出してしまう。でも、それなのにっ！　私は織場のHPの更新用のパソコンを開いた。Hoogle（フーグル）検索窓はスッキリして使いやすい。白い角丸長方形の入力欄に私は欲しい情報へと至る鍵を書いた。

『クソ親父　消したい』

「モウ！職場ノPCデ変ナ検索シナイデ。履歴、ノコルカラ」

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