851人が本棚に入れています
本棚に追加
当たり障りのない今日の出来事なんかを話しながら、カクテルを3杯ほど飲んだところで、俊が話し始めた。
「莉緒、ごめん… 」
「ん? 何が?」
「他に好きな人ができた」
「えっ?」
嘘でしょ?
「別れてほしいんだ」
「なん…で?」
「莉緒は悪くない。
俺が全部悪いんだ」
「だから、なんで?
相手は?」
「……同じ部署の子。
ほんと、ごめん」
「いつから?」
「分からない。
気付いたら、気になってて… 」
「いやだって言ったら?」
「……莉緒は言わないと思う」
は!?
「なんで?」
「莉緒は、俺なんかよりずっと大人だから、
気持ちが離れた男にみっともなく縋ったり
しないだろ?」
違うよ…
私だって、俊に甘えたかった。
だけど、俊が私を年上扱いして甘えてくるから、しっかりして見せてただけ。
「じゃ、俺、もう帰るわ」
そう言い残して帰っていく俊を引き止めることもできず、私はただ呆然と彼の背中を見送っていた。
けれど……
ん?
帰る?
どこへ?
っていうか、私はどこへ帰ればいいの?
彼が去って、いいほど経ってからようやく、事態の深刻さに気付いた。
別れた男の所へ帰る?
それって、なんか間抜けじゃない?
かと言って、他に行くあてがあるわけでもない。
「すみません。
スクリュードライバーください」
もう、なるようになれ。
私はヤケ酒を決め込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!