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※※※
真夜中。背後に現れた気配に、死神は不機嫌な声を出した。
「覗き見とは悪趣味だな」
「酷いなぁ。入れてくれたのはさっきじゃないか」
言葉の割には楽しげに、ソファーの裏から伸び上がった影が、黒衣の膝の上を覗く。
死神に髪を撫でられているのは、白い四肢をさらして横たわるエリック。
「綺麗だね」
「やらんぞ」
「そういう意味じゃないよ。君だって綺麗だし」
たちまち突き刺さる視線から逃げるように、黒い塊はソファーを回り込み、ローテーブルのそばにわだかまる。
そして音もなく形を変えるのを見て、死神は咎めるように言った。
「暁星、それは」
背中や手足の先は不定形に黒く揺らいでいるが、そこに座っていたのは緑の髪の青年。輪郭の曖昧なそれが笑う。
「君が身体を貸してた子がこの姿をくれて、なんだか気に入ったんだ。昔は私も人型だったのかなぁ」
見慣れてる格好なら上手なんだけどねと、今度ははっきりとサトルの形をとってみせる。
しかし死神に反応が無いとみるや、また不安定な青年の姿に戻った。
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