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「何でもマネすんじゃねーよ。だいたい意味わかってんのか」
もちろん子供2人は聞いてない。
「刃、なんでかくれんぼしてたの?」
「かくれんぼ?ほしこがみつけるです!」
答えも聞かず、星子はまた走って行った。
「じゃあかくれる!」
椅子を降りた宙に抱えられ、囲いが作る隙間の奥へ連行される。刃はもう、こういうときは抵抗しないに限ると諦め顔だ。
うきうきと隅にしゃがんだ宙だが、しばらく待っても星子は来ない。
覗いてみてもしんと静かで、窓の外で鳥が鳴くのまで聞こえる。
「変だな」
走って行った先で何かに夢中になったか。
刃が呟くと、宙は何か思い出したらしく、脚と腹の間から小さな友人を引っ張り出した。
「刃、エリックがへんって言ってたよ」
「あ?何の話だ?」
やっと満足に息ができるようになった刃は、いくらかよれよれながらも片目で見上げる。
「あのね、えっと、星ちゃんににんじんあげたり、おなべでコップゆでたりして、ぼーっとしてるって」
刃に心当りは、なくはない。
星子には切れ端をやったら面白がって食べたからだし、コップは月イチの煮沸消毒なのだが。
説明するのは面倒くさく、中途半端に笑う。
「まぁな。オレも悩み事があんだよ」
「まやみごとってなに?」
「悩み事。どうしようか決まんなくて困ってるって事」
「ふーん」
よくわかっていない返事だが、宙はすぐに笑顔になった。
「じゃあね、ぼくもね、なやみごと、あるよ?」
「へぇ。何だ?」
「さとると何してあそぶか、きまってないよ!」
「オレもサトルの事だ。まぁこっちは会えるかどうかって話からだけどな」
するとたちまち、やったー!と喜びだした。
「ぼくがいっしょに行ってあげる!」
「はァ?」
「あした、さとるとあそぶんだよ!やくそくした!刃もいっしょに行こ?」
何でそうなるんだ。
止めたいが、跳ねる宙に振り回されて返事どころではなく、小さな彼女はただただ目を回す。
宙はかくれんぼをしていた事などすっかり忘れ、刃を抱えて駆け出した。
「星ちゃーん!刃とあそぼー!」
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