4/23
前へ
/109ページ
次へ
「何でもマネすんじゃねーよ。だいたい意味わかってんのか」  もちろん子供2人は聞いてない。 「刃、なんでかくれんぼしてたの?」 「かくれんぼ?ほしこがみつけるです!」  答えも聞かず、星子はまた走って行った。 「じゃあかくれる!」  椅子を降りた宙に抱えられ、囲いが作る隙間の奥へ連行される。刃はもう、こういうときは抵抗しないに限ると諦め顔だ。  うきうきと隅にしゃがんだ宙だが、しばらく待っても星子は来ない。  覗いてみてもしんと静かで、窓の外で鳥が鳴くのまで聞こえる。 「変だな」  走って行った先で何かに夢中になったか。  刃が呟くと、宙は何か思い出したらしく、脚と腹の間から小さな友人を引っ張り出した。 「刃、エリックがへんって言ってたよ」 「あ?何の話だ?」  やっと満足に息ができるようになった刃は、いくらかよれよれながらも片目で見上げる。 「あのね、えっと、星ちゃんににんじんあげたり、おなべでコップゆでたりして、ぼーっとしてるって」  刃に心当りは、なくはない。  星子には切れ端をやったら面白がって食べたからだし、コップは月イチの煮沸消毒なのだが。  説明するのは面倒くさく、中途半端に笑う。 「まぁな。オレも悩み事があんだよ」 「まやみごとってなに?」 「悩み事。どうしようか決まんなくて困ってるって事」 「ふーん」  よくわかっていない返事だが、宙はすぐに笑顔になった。 「じゃあね、ぼくもね、なやみごと、あるよ?」 「へぇ。何だ?」 「さとると何してあそぶか、きまってないよ!」 「オレもサトルの事だ。まぁこっちは会えるかどうかって話からだけどな」  するとたちまち、やったー!と喜びだした。 「ぼくがいっしょに行ってあげる!」 「はァ?」 「あした、さとるとあそぶんだよ!やくそくした!刃もいっしょに行こ?」  何でそうなるんだ。  止めたいが、跳ねる宙に振り回されて返事どころではなく、小さな彼女はただただ目を回す。  宙はかくれんぼをしていた事などすっかり忘れ、刃を抱えて駆け出した。 「星ちゃーん!刃とあそぼー!」 ◆◆◆◇◇◆◆◆
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加