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びくりと震えて、星野は目を覚ました。
うたた寝をしていたらしい。
ひとを駄目にするビーズクッションに埋もれた顔を起こせば、あたりは真っ暗だ。しばらく事態が飲み込めない顔で居たが、やがてのそのそ起き上がった。
「……先生?」
かすれた声で、ぼんやりささやく。
「おはよう、こんばんは?よく眠れたかい?」
すぐに少しおどけたような声が返り、安心して笑った。
だんだん目が慣れて、カーテンが開けっ放しだった部屋のなかが見えてくる。
積み上がった段ボール。小物だらけのテレビ台。床に落ちた読みかけの本と、すっかり冷えているだろうマグカップ。
いま返事をくれた、そばでのんびり待っていたような人の姿は、どこにも見えない。
「もうすぐ日付が変わる時間だよ」
「そんなに寝てたの」
肩に染みた寒さを思い出して上着を探しながら、何故かぎゅっと息が詰まる気がして眉を下げる。
喉が痛く詰まる。
夜中に一人で目を覚ますと時々こうなる。
そんなときに呼びかければ、声はいつも返事をしてくれる。いつまででも話し相手になってくれる。たまに叱られる。でも星野の目には、誰も見えない。
こんな気持ちを寂しいと言うんだろうと、ぼんやりが抜けない頭で思い出す。
「こわい夢、見た」
「おや」
ぽろりと言葉が出たが、後が続かない。
待たれているのは分かるけれど、どうも中身はふわふわとして、わざわざ言う程のことじゃなかったなと諦める。
「ごめん、違う」
「そう。じゃあ、どうしたんだい?」
どうしたのかと言われても、少し前からどうかしている。
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