6人が本棚に入れています
本棚に追加
「あなた、おかしいですよ」
「あァ?」
キッチンで声をかければ、いつも通りに不機嫌そうな返事が来た。
しかし、刃の表情は何かがおかしく、手にした箸は塩入れに突っ込まれている。
「……それは、お箸より手で取った方がいいんじゃないですか」
言うと流石に本人も気が付いたらしく、顔をしかめて箸を放った。専用の小さな箸が転がる。
刃は不満げに息をつきながらがりがり頭をかくと、長い黒髪をかきあげる。そのままの体勢で、エリックを見上げた。
「お前に心配されるたァな」
「心配じゃありません」
むっとして返したが、刃は鼻で笑う。
「どっちでもいいや。だからってお前に出来る事も思いつかねェし」
いちいち言い方が感にさわり、エリックの声も硬くなる。
「宙が、食事がおかしいと言っていますよ」
「今朝の味噌汁か?ありゃ味噌入れすぎたな」
「今朝だけじゃありません。きのう星子はおやつと言ってニンジンを持っていました」
「あー、あれな。チビはな、野菜を食うべきだぞ」
気の無い返事をしながらまた、湯が沸き立つだけの鍋の様子を見ている。
「それで、何をしているんですか?」
「薬」
「はい?」
「死神に言うこときかせる薬作ってる」
エリックは改めて彼女の正気を疑った。
最初のコメントを投稿しよう!