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「あなた、おかしいですよ」 「あァ?」  キッチンで声をかければ、いつも通りに不機嫌そうな返事が来た。  しかし、刃の表情は何かがおかしく、手にした箸は塩入れに突っ込まれている。 「……それは、お箸より手で取った方がいいんじゃないですか」  言うと流石に本人も気が付いたらしく、顔をしかめて箸を放った。専用の小さな箸が転がる。  刃は不満げに息をつきながらがりがり頭をかくと、長い黒髪をかきあげる。そのままの体勢で、エリックを見上げた。 「お前に心配されるたァな」 「心配じゃありません」  むっとして返したが、刃は鼻で笑う。 「どっちでもいいや。だからってお前に出来る事も思いつかねェし」  いちいち言い方が感にさわり、エリックの声も硬くなる。 「宙が、食事がおかしいと言っていますよ」 「今朝の味噌汁か?ありゃ味噌入れすぎたな」 「今朝だけじゃありません。きのう星子はおやつと言ってニンジンを持っていました」 「あー、あれな。チビはな、野菜を食うべきだぞ」  気の無い返事をしながらまた、湯が沸き立つだけの鍋の様子を見ている。 「それで、何をしているんですか?」 「薬」 「はい?」 「死神に言うこときかせる薬作ってる」  エリックは改めて彼女の正気を疑った。
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