6人が本棚に入れています
本棚に追加
エリックが主と慕う存在は、言われた通り人間ではない。
どうしても受け入れられないが、一言で言うならやはり『死神』だ。
視線や指先ひとつであらゆる事を意のままにし、一度死んだはずの自分に二回目の人生を与えてくれた存在。
そんな主に言うことをきかせる。
エリックにとっては、夜が気に入らないから太陽を沈ませないと言っているようなものだ。しかもただの熱湯にしか見えないもので。
刃はこちらを見もせず、さも当たり前のように続ける。
「あいつに実体があるなら薬も効くだろ」
「何を考えてるんですか」
「は!何を何がどうしてドウシテ。お前が知ってどうすんだ。知りたがりも大概にしやがれ」
あっち行けと手を振られ、かっとなった。
「そうではなくて!」
エリックがその細い腕を掴んだ。
瞬間、電気でも流れたように刃が跳ね、目を見開いた。
「……何で会う前提なんだ?」
ぽつりと言って不思議そうに瞬きを繰り返し、エリックに掴まれた腕を見ている。
「ん?お前に触られたのは初めてだな」
先ほどまでのどこか張りつめた様子から、明らかに雰囲気が変わった。
寝起きのような彼女に見られ、エリックは何か肩の力が抜けた心地で、大きなため息を吐いた。
「……話が見えません。あなた、誰に会うんですか」
「あぁ、まぁ、そうだな。話せば長い」
火を止め、刃はその場に座り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!