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「宙は行かせられん」
「なんで?」
「まだ幼い。字も読めないだろう」
「なまえかけるよ!」
「ああ、宙は賢い子供だ。だが平仮名しか読めない子供には、ただ行ってもつまらぬ所だ」
「えー?」
宙の望みは何でも応えようとする彼は、意外にも図書館へは行かせたくないようだ。
エリックは様子を伺おうとしてみるが、星子が首にぶら下がった今は、主の顔さえ見られない。聞こえる声は、いつも通り穏やかで、宙に構っているときと変わらない。
考えすぎかと思う間に星子が落ちて、受けとめる。
面白がってまたやろうとするのに構っているうち、宙はなだめられたようだ。
「大学も学び舎だ。休日はある。階下へは、あれが居る折に行けば良かろう」
「それっておやすみ?おやすみっていつ?」
「また尋ねてみるといい」
それですっかり気を変えて膝を降り、星子を誘って遊び始めた。
エリックはそっと立ち上がり、主の横へ戻る。
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