7/14
前へ
/109ページ
次へ
「宙は行かせられん」 「なんで?」 「まだ幼い。字も読めないだろう」 「なまえかけるよ!」 「ああ、宙は賢い子供だ。だが平仮名しか読めない子供には、ただ行ってもつまらぬ所だ」 「えー?」  宙の望みは何でも応えようとする彼は、意外にも図書館へは行かせたくないようだ。  エリックは様子を伺おうとしてみるが、星子が首にぶら下がった今は、主の顔さえ見られない。聞こえる声は、いつも通り穏やかで、宙に構っているときと変わらない。  考えすぎかと思う間に星子が落ちて、受けとめる。  面白がってまたやろうとするのに構っているうち、宙はなだめられたようだ。 「大学も学び舎だ。休日はある。階下へは、あれが居る折に行けば良かろう」 「それっておやすみ?おやすみっていつ?」 「また尋ねてみるといい」    それですっかり気を変えて膝を降り、星子を誘って遊び始めた。  エリックはそっと立ち上がり、主の横へ戻る。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加