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「新しい絵本でしたら、お昼寝の間に借りてきます」 「良い。期限はまだだろう?宙はまだ飽きてはおらんよ」  宙を見ながらゆったり微笑まれ、エリックは後が続かない。  遊ぶ二人を黙って見ていたが、やはり図書館のことがわだかまり、落ち着かない。  主が言ったこととはいえ、どうにも気になって口を開いた。 「……僕も、行かないほうが良いですか」 「奨めはせん。だが宙はまだ幼い。お前ならば問題無い事であっても、容易に害されることがある」  だから止める。ごく当たり前の事だ。  だがエリックが訊きたいのはそこだけではなかった。  考えすぎかもしれない。でも訊かないまま過ごしたために、酷い目に遭ったのだ。  意を決して尋ねる。 「図書館には、まだ、何かあるんですか?」  主の眼が向いた。 「ある」  思わず身を固くしたが、白灰の瞳には面白がっている光があり、エリックは戸惑う。 「……それは」 「何とも言い難い。有象無象が何を成すかは、その時にならねば分からん」  古い物が集まる場の常だと、なんでもない事のように言われる。 「気になるか?」  指の背で頬を撫でられ、エリックは俯く。  宙を図書館へ行かせたくない理由は別にあるのではないかと考えてしまうが、元々訊きたいのはそれだけでは無い。 「はい。……結局、あの秋に何が起きたのか、僕には分からないままです。閣下は…その、あの暗闇に現れた誰かを、ご存知のようでしたから」  主の気配が変わった。  機嫌を悪くしたのかと見上げる間に、ぐいと引き寄せられた。
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