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「お父さんと浅草寺に行くから、駿は留守番ですよ」
「ああ、もちでも食いながら待ってるよ」
お母さんは俺の隣に腰かける。体重でソファーが下に沈んだ。俺はお母さんをガン見する。こんな近くに座らなくてもいいのに!と言いたかった。だが、お母さんは俺の視線なんか気にも留めない様子でお笑い番組を見て笑っている。俺はお母さんの頬をぷにゅっと摘まんだ。
「いたっ、何すんの?」
「いや、いい頬っぺただよ。もちみたい」
俺はそう言うと苦笑した。元旦は大人しく留守番していてあげよう。正月くらい夫婦水入らずの方がいいだろう。うちの両親は理想の2人だ。
大晦日になった。スマホで夕方5時を確認する。早いもので今年も終わりか。1年を振り返って考えていると、突然に玄関のインターホンが鳴る。バタバタと廊下を歩いて戸を開けると陽太が立っていた。手には紙袋を持っている。
「これ、お歳暮と年始の挨拶。こんなもん渡したこと無いから一緒にしたよ」
「はあ、いらねーし」
俺は冷たく言う。
「ま、貰えよ、そんで今日泊めて」
「はあ、無理、無理。明日は元旦だぞ」
「だからだよ」
陽太はそう言うとリビングに向かって「お邪魔しまーす」と言った。お母さんが返事をする声が響き渡る。陽太とお母さんは面識がない。だが、お母さんはリビングから顔をだして嬉しそうにした。まあ、俺が友達を連れてくるって中学以来だから喜ぶのも無理はないか。お母さんは紙袋を受け取って包みを取った。ねずみの形をした石鹸が並んでいた。
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