目が覚めたら、まさか

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 陽太はつまらないものですみません。と言って頭を下げる。でも今日泊まるってどういうことだ!?俺は陽太の服を引っ張って2階の自室に連れて行く。部屋は大掃除をした後なので綺麗に片付いていた。 「男の部屋にしてはさ、中々、綺麗じゃん」 「年末だからだよ!っていうか、帰れよ」  俺はキッと睨みつける。 「やだよ、今日は泊まるつもりで来てるんだ。親にだって帰らないって言って出てきちゃったし」  なんだよ、それ。折角、明日は1人で元旦を有意義に過ごそうと思っていたのに。陽太はベッドに横になる。勝手に布団に乗るんじゃねーよ。俺は陽太の背中に手を差しいれて身体を起こす。  結局、年越しそばを食べる段階になっても陽太は家に居た。お父さんまでもが嬉しそうにビールを飲んでいる。年越しそばはお母さんがかき揚げを作ったので温かいそばだった。毎年の恒例できんぴらごぼうも作ってある。これをそばに乗せると格段に美味しい。ああ、でも今そんなこと言ってる場合じゃない。陽太はすっかり家に馴染んでいて、お風呂まで入ると言っている。  10時を過ぎてから俺は風呂に入った。陽太は先に入っていてまたノンカロリーのコーラを飲んでいた。お笑い番組を観ながら爆笑している陽太を見ると怒る気になれなくて、ズルズルと帰さずに居させてしまった。きっと今日は泊まるんだろう。終電は1時くらいまで走っているが、外は凄い北風だ。いくら何でも今頃になって帰れと言うのは酷な気がする。  外では除夜の鐘が鳴っている。もう直ぐ年が明ける。まさか陽太と新年を迎えるとは思っていなかった。テレビで行く年、来る年が始まる。お母さんが顔を綻ばして「ハッピーニューイヤー」と言う。俺はうんと頷いて陽太の顔を見た。朗らかに笑っていた。何で人んちに無理やり上がり込んでそんな顔が出来るんだ!?俺は陽太の神経を疑った。
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