目が覚めたら、まさか

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 陽太がドヤ顔をして俺を見た。国語の教師が出した漢字の読み方を簡単に答えたからだ。どうだ、カッコいいだろ、俺。そう言いたげな顔だった。陽太は確かに顔が小さくて彫りが深い外人みたいな顔をしているから、女子たちには人気があるが、自分でアピールするようにドヤ顔をされると辟易とする。国語の教師は鈍感な奴なので陽太を褒めちぎる。俺は閉口して授業が終わると机に突っ伏した。  ここは埼玉県の北部にある熊谷市だ。そこにある北里高校に俺は通っている。私立の大きな高校で1学年が8クラスもある。陽太とは同じクラスだ。1年生の頃はカッコいい奴がいるなと思っているだけだったが、2年生になって同じクラスになると陽太のイケメン度が逆に俺を引かせた。完璧な奴は逆に怖い。  陽太はバスケットボール部だ。中学生のころからやっていると聞いた。だから背は高い。俺より10センチは高いだろう。クラスで後ろから2番目だ。運動をやっているからか筋肉が適度についていて、でも体育館で部活をやっているからか肌の色は白い。茶色い髪のサラサラヘアーだ。  陽太は俺の座っている席の前に座って、ふふんと言ってから、まるで自分の髪を弄るみたいに細い指で髪を触ってくる。俺の黒いキューティクルがある髪が好きなんだと言っていつもこの髪を触る。俺はウザったいと思って手を振り払った。陽太は「っ、んだよ!」と声を出したが俺はガン無視した。陽太は舌打ちして離れて行った。動作を見守っていると暫くしてから黒板の前で同じバスケットボール部の男子とじゃれあっている。
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