170人が本棚に入れています
本棚に追加
常に危険と隣り合わせ、冷静に周りの状況を見極め行動する。一つのミスが生死につながることもあるからだ。
金色頭で長身の男である瀬尾は新参者だ。
ゆえに兄貴分の指示を仰ぎ、慎重に行動することを心掛けていたのだが、抗争の際に兄貴分の一人を庇い怪我を負ってしまった。
だが、この怪我は許されるものではなかった。零以外がつけた傷と痕だから。
瀬尾は許しを乞うために病院を抜け出して零の元へと向かった。
住処は数か所あり、それを知っているのは側近の一人、瀬尾の兄貴分である有働だ。
居場所を聞き出すとタクシーに乗りこみ、館の一つへと向かい、到着すると真っすぐに零の部屋へ。
入室の許可を得て部屋の中へとはいると、書斎机でパソコンをしている零の姿がある。
「先程は申し訳ありませんでした」
腕を後ろで組み、深々と頭を下げて待つ。
すると視線に綺麗な黒い革靴が見え、瀬尾の顎を硬い何かが押し上げた。
その時、目に飛び込んできたのは零の冷たい目だった。
美しい。はじめて出会った時もあの目に心を奪われたのだ。
うっとりとしかけたところに、零が手にしていた鞭のグリップエンドで傷口を抉りはじめた。
真っ白な包帯が血で赤く染まっていく。痛みに声をあげそうになるが必死でこらえた。
「……申し訳ありませんっ」
「お前に痕をつけていいのは俺だけだと、散々、その身体にに教えてやったはずだがな。俺を失望させるな」
そう言うと零は傷口からをグリップエンド離し、今度はボディで打ちつけてきた。
「ぐはっ」
血が包帯からしみだしてポタポタと床に落ち、高価な絨毯に瀬尾の血がしみこんで広がっていく。
零の部屋を汚してしまった。急いでシャツで血をふき取るが、汚れがひどくなるだけだった。
革靴がその手を踏みつけた。
「余計なことをするな。下がれ」
「はい」
立ち上がり頭を下げる。血を失っているせいか意識が朦朧としている。
ふらつく足でどうにかドアまでたどりつくと零の部屋を出た。
一歩。また一歩。
足を引きずる様に歩き、その途中で瀬尾の意識が途切れた。
最初のコメントを投稿しよう!