空夜に温もりを

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※※※  今となっては零に見せながらする行為にも慣れてしまった。それ所か色っぽく誘うような視線を向ける時もある。  その度に内心、ひやひやとする思いだ。 「それにしても有働が俺のモンになったと思ったらその日のうちに零の前で抱かれるなんてね。さすがの俺もそれは想像してなかったよ」  と、酒を手に戻ってきた香月が有働の話のしめを括る。  楽しそうにその様子を眺める零を想像したのか瀬尾が苦笑いを浮かべる。 「なんだか二人に犯されている気分だったよ」 「ま、そんなこともあって俺たちはこうなったわけだ」  有働に甘える様に首へと腕を絡ませる香月の髪を撫でながら酒を飲む。 「そうだったのですね。あの、有働さんに相談したいことがあります」  二人を眺めていた瀬尾が背筋を伸ばし、 「俺のことなのですが……」  話始めようとした、その時。上着のポケットに入れられたスマートフォンからバイブ音が聞こえた。 「失礼します」  スマートフォンを手にし、有働と香月に断りを入れてから電話に出る。相手は表情を見れば一目瞭然だ。  二言、三言と交わしたあと、 「はい。わかりました」  通話を切り、瀬尾がコートを手に立ち上がった。 「戻ります」 「そうか」  香月が瀬尾を送るために席を立つ。 「まて、瀬尾」 「はい?」  まだ封が開けられていないマッカランを掴み瀬尾に手渡す。 「持って行け」 「え、でもこれは思い出の品では」 「零様もお好きだからな」 「ありがとうございます。頂きます」  マッカランを丁重に受け取り店を後にする。  それを見送った後、香月が有働の腕に腕を絡ませ。 「最後の1本だったんだけどな」  甘える様に肩へすり寄る。 「そうか。残念だったな」  その言葉とは裏腹。表情は穏やかで目には暖かさが宿る。 「好きだよ、そういう所も」  ふふっと笑い有働を見上げる香月の目も優しい色をしており、そのまま覗き込むように顔を近づける。 「ここじゃダメ。部屋でゆっくり、ね」  唇が触れ合う寸前、香月の手によって唇がふさがれてしまう。  腕から温もりが離れ香月が外へと出ていく。最後の客は有働と瀬尾だったので今日はもう店を閉めるのだろう。 「香月、手伝う」  ドアを開け外に出れば香月が「お願い」と微笑んだ。
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