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零ちゃんのママは、わたしの手に乗ったヒヨコを触って笑った。
「ふみちゃんは零がキライ?」
零ちゃんのママは好き。
だけど零ちゃんのことはキライ。
うまく言えなかった。
「そうだよね。零はふみちゃんに意地悪だものね。でも、意地悪するのは本当はとっても気になってるからなのかも。他の子がふみちゃんをいじめるとね、零ったらすごく怒るのよ」
零ちゃんのママはわたしの髪をそっと撫でた。
「ふみちゃんをキライなんて、きっとうそ。だからキライにだけはならないであげてね」
それからだった。
零ちゃんからもらったヒヨコを見る度に零ちゃんはホントはわたしをキライだからいじめたりしてたんじゃないって思いたくなったのは。
零ちゃんからもらったヒヨコは今でもわたしの宝箱の中に入ってる。
『これ、やるよ』
『え、…いいの?』
幼い手のひらふたりに光り出したヒヨコは今もわたしの胸の中に光ってる。
【完】
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