君に会いたい

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僕は98歳で死んだ。 僕の人生は生まれてから幸せでないときもあったけど、だいたい幸せだった。 この前の人生は62歳で死んだ。 それからその前は43歳。その前は74歳で、その前は28歳だった。 62歳で死んだときは、君を見つけられず、生涯独身だった。 43歳、74歳、28歳で死んだときは君といられる時間が短かった。 43歳のときは、君がぼくのお母さんだったね。まあ、あれはあれで、別れる心配がないから幸せだったんだと思うけど……。 74歳のときは君が生まれてくるのが遅くって……出会えた時、君はひ孫だったね。ああ、君以外の人と結婚したのは責めないでおくれ。君だって、僕以外の人と結婚したじゃないか。タイミングが合わなかったんだから、仕方ないだろう。 今回はちゃんと君と恋に落ちて、結婚し、一緒に年をとれた。悪くない人生だったと思うよ。君も幸せだったといいな。 僕は先に生まれるよ。僕が生まれる順番がきたから。君も早く生まれておいで。そして一緒に楽しく過ごそう。待ってるよ。 僕は君を抱きしめた。その瞬間、僕だけが消えた。 僕が目を覚ました時、僕は真っ白な壁に囲まれていた。 ああ、ここは病院か。次の人生が始まったんだな。 僕は覚悟をした。 生きていると、つらいこともある。でもいいこともある。君に会えるのを楽しみしているよ。
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