本当のバケモノは。

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本当のバケモノは。

 どうしても、懺悔したかったんです……今日は。  別に貴方は神父様でもなんでもない。僕だって、キリストの教えを信じる敬虔な信者というわけじゃない。  ただ、どうしても罪を告解しておきたかった。こんなこと話したって自己満足でしかないし、起きてしまった事件に取り返しがつくものとは思っていないのですが。  僕が中学生だった時、クラスメートにある男の子がいました。A君としておきます。  彼にはある特徴がありました。その、こんなことを言ってしまってはなんですが……とても外見が醜かったのです。どのように、というのはなかなか難しい。体が大きい子も、首が曲がっているように見えるほどの猫背も、髪の毛と繋がっているかのように思えるほど太い眉も極端に小さな目も、それ単体ならきっと持ち得る人はいるんだと思います。制服がぱつぱつになるほど太っている人も、落ち着きがなくて貧乏ゆすりが止まらない人も、分厚い唇も脂ぎった肌も。  ただそれらを集めて、とにかく貴方が想像しているよりも遥かに悪い方向に煮詰めたら――そうなってしまった、というか。多分今貴方が考えているより百倍、彼の容姿はきついものであったと思います。  子供っていうのは、残酷ですよね。中学生って、自分では結構大人だと思っているけど、実際はまだまだ精神的に幼い一面があります。僕自身、高校生になった今でさえ自分が大人になったとは全く思っていない。人によっては、成人式を迎えてもまだまだだ、という人もきっといることでしょう。  とにかく後先を考えないし、好き嫌いに正直になりすぎてしまう。  自分が悪いことをしていると自覚していても、周囲に過剰に合わせてしまって本当の善悪を貫き通すことができなくなってしまったりする。  僕のクラスも、まさにそんな状態でした。  Aは小さな動物や虫、可愛いものが大好きなとても優しい人物でした。お母さん思いで、学校から帰ったら率先して家事を手伝い、勉強も真面目にやるから成績もいい。運動神経は……ちょっと微妙でしたけど、力持ちなので学校のイベントとかでも荷物持ちを積極的にやろうとしました。僕は、そんな彼を、本当はとても尊敬していたのです。  でも、それを言い出すことがどうしてもできなくて。  理由は簡単です。彼は、クラスのみんなにいじめられていました。モノを隠されるとか、殴られるというイジメではないです。ただ気持ち悪がられて、彼の傍に誰も近寄らない。発言をするだけで嫌な顔をされ無視をされ、本人が反撃しないことをいいことに悪口を言いたい放題にする。そういう状況だったんです。
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