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12章
体が動くことを拒絶している。
だが、それでもクロムは宙に捕らわれているロミーを助け出そうとしていた。
「クロム!? バカ野郎!! 無茶すんじゃね!!!」
ルドベキアには、何故クロムがそんな状態になっているのかがわからなかったが、その凄まじい形相や血塗れの顔をしている彼を見て、堪まらず怒鳴りあげた。
クロムは、マナ、キャス、シックスと同じく自我のある合成種である。
したがって、その体内にある細胞や遺伝子が、産みの親であるクロエに逆らうなと言い、彼の行動を阻止しようと暴れているのだ。
だが、それでもクロムは怯まずに、体を制御していた。
「ああ、愛……愛なのね。やはりあなたが1番私に似ているわ。嬉しい……とても嬉しい」
壮絶な苦痛に耐え、自分の意思を押さえ込もうとする体に逆らうクロムを見たクロエは、恍惚の声を漏らした。
「うおぁぁぁッ!!!」
クロムは、握っていた大人の背丈をも超えるハンマーを振り、ロミーの体を拘束している配線を解く。
やがて自由の身となったロミーが、縛り付けられていた大広間の天井から落ち、クロムによって抱きかかえられた。
「ロミー……無事でよかった」
顔中に血管が浮き上がった状態のクロムは、まだまだ痛みを味わいながらもロミーを助け出せたことに安堵の表情を浮かべている。
そこへ、電気仕掛けの黒子羊ルーも、鳴きながら飛びついてきた。
ロミーはまだ気を失ったままだったが、クロムとルーは彼女を取り戻せたことだけでも嬉しくて仕方がなかった。
「これはマズイ……」
それをルドベキアの攻撃を避けながら、横目で見ていたグラビティシャド―がボソッと呟くと、大広間にいる者――全員の頭の中にクロエの声が響く。
「少々強引になっちゃうけど、データの移行はまだ終わっていないわ」
すると、クロムによって引き千切られた配線から光が輝きだし、やがてその光は何かの形となって現れた。
その光――いや、エネルギー体といったほうがいいのか、ともかくそれは人間の形をしていた。
「ママ……無茶をするね」
現れた光を見たグラビティシャド―がボソッと呟いた。
その人の形をしたものは、全身が眩く輝いている光そのものであり、そしてとてつもなく力強さを感じさせるエネルギー体そのものであった。
「この姿は長く維持できないけど、な~に、すぐに終わらせればいいわ」
エネルギー体から聞こえるデジタル処理されたような女の声――。
その響きは、間違いない、先ほどから頭の中に聞こえていたクロエの声と同じだった。
「うがぁぁぁッ!!!」
人の形をしたエネルギー体――クロエが、ロミーを抱くクロムに近づくと、彼の体はさらに悲鳴をあげた。
顔だけではなく、全身の血管が浮き出始め、それが破裂。
傍にいたルーは、彼に触れながら鳴くことしかできない。
クロエは、ロミーをクロムとルーから奪い、彼女の体を支えながら立たせた。
「さあ、始めましょうか」
そう言ったエネルギー体ことクロエは、まるで微笑んでいる表情をしているようだった。
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