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15章
グラビティシャド―の重力を操る能力から解放されたアンは、クロエに電撃を浴びせると――。
「どうやらこっちも動けるようになったみたいだな」
――シックス。
「ルーには料理を食べられたりとか色々あったけど……あたし、絶対にあなたを許さないッ!!!」
――マナ。
「これで4対1だ。すぐにルーの後を追わせてやるぞ、クロエッ!!!」
――キャス。
頭を抱えて苦しんでいた3人が立ち上がって、クロエのほうへと向かって来ていた。
「まあ、こうなるってわかってたけど……やっぱりムカつくな」
それを見たグラビティシャド―が口元を歪ませていると、ルドベキアの斧槍ハルバードが彼の顔を掠める。
頬からは血が流れ、ルドベキアが笑みを浮かべた。
「やっと当たったぜ」
「……掠っただけでそんな喜ぶなよ」
グラビティシャド―はつまらなそうに顔をしてから、ルドベキアを睨みつけた。
その隣では――。
アン、マナ、キャス、シックスの4人が、激しい稲妻に包まれたクロエを囲んでいた。
それから笑い声が聞こえ始めると、アンは再び機械の腕を翳して電撃を放つ。
「よし、俺たちも続くぞッ!!!」
シックスはそう叫ぶと、両手の掌を合わせてから、それを大きく振りぬき、その動作を繰り返した。
すると、無数の風が刃となってクロエへと向かって行く、
マナも体から溢れる炎を火球へと変えて、次々に直撃させ、キャスも腕から湧き出した水を、水圧カッターのようにして飛ばした。
4人による凄まじい攻撃により、大広間内の壁は破壊され、その衝撃で室内は爆風に包まれる。
「これ無事でいるはずはねえ。次はてめえだ」
ルドベキアがグラビティシャド―へそう言うと、彼は呆れて顔をしてフッと鼻で笑った。
ルドベキアが口にした言葉。
アンたちも同じことを思っていた。
全員で全力の攻撃を喰らわせたのだ。
当然かなりのダメージを与えられただろうと。
だが――。
「フフフ、こんなものかしら?」
立ち上げる土煙。
その中からデジタル処理されたクロエの声が聞こえてくる。
そして、やがて土煙が晴れると、そこにはクロムの体を抱えたエネルギー体――クロエの姿があった。
体中の血管が破裂している状態――血塗れで意識の全くないクロム。
クロエは、そんな彼の顔にキスをすると、愛おしそうに抱きしめる。
「や、やめろッ!!! 何のつもりだッ!!!」
グラビティシャド―によって、床に押さ込まれているロミーが叫んだ。
「今はとりあえず体が欲しいからね」
クロエがそう言うと、クロムの体に彼女の光輝く体が吸い込まれていく。
そして、すべての光がクロムの体に入ると――。
「ふぅ~これで消滅せずにすむわ。それにしてこの服、袖が邪魔ね。長すぎる」
気を失っていたはずのクロムが1人立ち上がって、着ている大きめのチュニックの両袖を肩から引き裂いた。
それを見たその場にいた者全員が気が付いた。
その声はクロムのものではない。
「ま、まさかクロムの体を……」
アンが呻くように呟いた。
その呟きを聞いて、アンたちの目の前にいるクロムが、とても彼とは思えない不気味な笑みを浮かべる。
あのいつも穏やかな笑顔を見せていたクロムはもうそこにはいなかった。
「ええ、だってテラ……じゃなかった、クロムは私の子供だもの。なんならそこの3人の体にも入って見せようかしら?」
そう言ったクロム――いやクロエは、マナ、キャス、シックス3人を順番に人差し指を突き立てた。
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