20章

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20章

突如(とつじょ)(あらわ)れたグレイ。 その姿を見たそれぞれの反応(はんのう)は――。 クリアをホッと(かた)を下ろして安堵(あんど)表情(ひょうじょう)()かべていた。 それは以前に彼女は彼――グレイとは顔見知(かおみし)りだったからだ。 クリアのグレイに対する初対面(しょたいめん)印象(いんしょう)は、“ふざけたことばかり言う(つか)(どころ)のない男”といったものだった。 だが、彼がアンの(そだ)ての親ということもあって、特に悪い印象は持っていない。 だが、ラスグリ―ンは――。 「……シ―プ・グレイ。クロエの家畜(かちく)のお出ましだね」 クリアとは(ちが)い、不気味(ぶきみ)な笑みを浮かべていた。 ラスグリーンは、初めてグレイとアン、ニコと出会ったときから、アンとは別の理由でグレイのことを追いかけていた。 それは、グレイと対峙(たいじ)したときに感じた――彼とクロエの関係を知ったからである。 何故ラスグリーンが、グレイとクロエのことがわかったのか? それは、そのときに合成種(キメラ)とマシーナリーウイルスの適合者(てきごうしゃ)だけが持つ力――。 Personal link(パーソナルリンク)――通称P-LINK――相手の心の中が見える能力が発動(はつどう)したからだった。 グレイの心の中を読み取ったラスグリ―ンは、今まで続けていた合成種(キメラ)()りや、成人(せいじん)した人間を無差別(むさべつ)(おそ)うのを止め、彼を追いかけてこのストリング城まで乗り込んできたのだ。 すべての元凶(げんきょう)となったクロエの(ひつじ)シ―プ・グレイ――。 ラスグリ―ンは、そのことをクリアへとすべて説明(せつめい)した。 彼の言葉を聞いたクリアは、正直どうしていいかわからなくなってしまう。 グレイはアンの育ての親――。 その人物が文明社会(ぶんめいしゃかい)崩壊(ほうかい)させたコンピュータークロエの産み出した合成種(キメラ)だったこと――。 そして、ラスグリ―ンや、アンから聞いていた仲間たちも皆合成種(キメラ)であったこと――。 今のクリアは、その事実(じじつ)処理(しょり)できずに(かた)まってしまっていた。 「今ラスグリーンが言ったことは本当なのですか?」 だが、それでもクリアはまだ信じられないようで、グレイに向かって(たず)ねた。 彼は、無感情(むかんじょう)に――まるで機械人形のような視線(しせん)を返し、ただ(うなづ)く。 クリアは、取り(みだ)しながらも質問を続けた。 あなたにとってアンの存在(そんざい)はなんだったのか? 何故クロエとのことを(かく)していたのか? ずっと彼女を(だま)していたのか? と、次々に言葉を()びせたが――。 「根掘(ねほ)葉掘(はほ)り訊かれるのは好きじゃないな。それよりも、ストリング帝国の皇帝が待ち()ねてるよ。ほら、顔なんてあんなになっちゃて」 グレイはふざけた態度(たいど)をとって、まともに返答(へんとう)してはくれなかった。 「底知(そこし)れん男とは思っていたが、まさかコンピュ―タ―クロエの使いだったとはな」 今まで(だま)っていたストリング皇帝が、(ゆか)に突き()したままだった()()な2本のピックアップブレ―ドを手に(にぎ)る。 そして、ゆっくりとグレイのほうへと歩き出した。 グレイは向かってくる皇帝の姿を見ても、特に身構(みがま)えている様子(ようす)もなく、ヘラヘラしているだけだった。 「シ―プ・グレイ……。我がストリング帝国に多大(ただい)貢献(こうけん)をしても、褒美(ほうび)出世(しゅっせ)も何も(のぞ)まなかった男……。そうか……その理由はクロエだったというわけか……」 そして、グレイの前で足を止めたストリング皇帝は、手に持ったブレードを彼へと向けた。 「だが、なんということはない。私はただ世界を守るために貴様(きさま)排除(はいじょ)するだけだ」
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