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24章
ノピアの目の前でバラバラとなったストリング皇帝。
その四散した腕や足を見て、ノピアは驚愕した。
何故ならば、ストリング皇帝の体はすべて機械でできていたからだった。
繋ぎ目から見えるメタリックな金属の部分。
それらからは電気の音がビリビリと立てられている。
「皇帝閣下……こ、これはマシーナリーウイルスの……?」
ノピアは一瞬だけそう考えたが、すぐに違うことに気がついた。
それはマシーナリーウイルスによって機械化しても、体内を流れる体液――血は人間と同じく赤いはずだったからだ。
ノピアは、バラバラなってしまったストリング皇帝が転がっているところへと駆け寄った。
傍に居るグレイに警戒しながら、首だけとなった皇帝へと声をかける。
「皇帝閣下、ストリング皇帝閣下!! ノピアです!!! ノピア·ラシックです!!!」
ノピアは半壊したストリング城の廊下の壁に飾られていた剣を手に握りながら、首だけとなったストリング皇帝へ片膝をついて拝謁。
だが、その声と態度はとても荒々しいものだった。
普段ストリング皇帝の前で、物腰は慇懃でも素っ気のないノピアだったが、その態度を見れば、彼がバッカス将軍や他の帝国将校のように皇帝へ忠誠を誓っていたことを改めて思わせる。
グレイはそんなノピアの姿を見ながら、クスッと笑みを浮かべた。
それを横目で見たノピアは、表情を強張らせて立ち上がる。
「何を笑っている?」
ノピアは静かながら威圧的な態度でグレイに声をかけた。
グレイは何も言わずに、おどけた調子で彼へ薄ら笑いを見せるだけだった。
「だから……何を笑っているんだッ!!!」
そんなグレイ様子に耐えられなくなったノピアは、持っていた剣で斬りかかった。
だが、グレイは宙に灰色の空間を作り、その中へと消えてしまう。
消えたグレイに用心し、周囲を見渡したノピアだったが、彼が現れる様子はない。
しばらくすると、ノピアの頭の中に不快感と共に声が聞こえてきた。
「ノピア将軍……君は使えるかもしれないな。いざというときのために生かしておくか」
どこからか聞こえてくるグレイの声。
ノピアはその言葉の意味がわからないまま、頭の中に流れてくる不快感を振り払うため、叫ぶと、彼の脳内に、現在――このストリング城での状況が、映像となって映し出されていった。
空へと浮かんでいくストリング城――。
アン、マナ、キャス、シックス、クロム、ロミーの姿――。
飛行船で侵入してきたクリアとルドベキア、ニコとルー。
目の前でバラバラとなっているストリング皇帝が、機械兵オートマタを率いている様子――。
そして、ノピアが感じていた取り分け大きい不快感の正体――コンピュータークロエと、傍に立っているグレイとグラビティシャド―2人――。
「な、なんということだ……このストリング城自体がコンピュータークロエだったのか……。それと……ストリング皇帝閣下がシープ·グレイの作った人造人間だったなんて……」
脳内に流れ込んできた映像を見たノピア。
あまりの衝撃の事実にその場に立ち尽くしていると――。
「ノ、ノピア将軍……そこにいるのか……?」
首だけとなったストリング皇帝が声をかけてきた。
ノピアはすぐに皇帝へと駆け寄る。
苦しそうに呻くストリング皇帝。
ノピアは、皇帝の最後となるであろう言葉を聞いていた。
「ど、どうやら私はここまでのようだ……後を……頼むぞ」
「な、何をおっしゃるのです!! 皇帝閣下がいなければ……世界はッ!!」
「君がやるのだ……。私に変わってこの終末の後の世界を理想郷にしてくれ。君はマシーナリーウイルスの“適合者”であり、ただの将校では終わってはならん男だ……わかるか……ノピア·ラシック……私を失望させんでくれ……」
ノピアは、そのストリング皇帝の言葉に涙を称えた。
そして、完全に動かなくなった皇帝の側にあった、真っ赤なピックアップブレードを握るのであった。
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