24章

1/1
前へ
/40ページ
次へ

24章

ノピアの目の前でバラバラとなったストリング皇帝。 その四散(しさん)した(うで)や足を見て、ノピアは驚愕(きょうがく)した。 何故ならば、ストリング皇帝の体はすべて機械でできていたからだった。 (つな)ぎ目から見えるメタリックな金属(きんぞく)の部分。 それらからは電気の音がビリビリと立てられている。 「皇帝閣下(かっか)……こ、これはマシーナリーウイルスの……?」 ノピアは一瞬(いっしゅん)だけそう考えたが、すぐに(ちが)うことに気がついた。 それはマシーナリーウイルスによって機械化しても、体内(たいない)(なが)れる体液(たいえき)――血は人間と同じく赤いはずだったからだ。 ノピアは、バラバラなってしまったストリング皇帝が(ころ)がっているところへと()()った。 (そば)に居るグレイに警戒(けいかい)しながら、首だけとなった皇帝へと声をかける。 「皇帝閣下、ストリング皇帝閣下!! ノピアです!!! ノピア·ラシックです!!!」 ノピアは半壊(はんかい)したストリング城の廊下(ろうか)(かべ)(かざ)られていた剣を手に(にぎ)りながら、首だけとなったストリング皇帝へ片膝(かたひざ)をついて拝謁(はいえつ)。 だが、その声と態度はとても荒々(あらあら)しいものだった。 普段(ふだん)ストリング皇帝の前で、物腰(ものごし)慇懃(いんぎん)でも()()のないノピアだったが、その態度(たいど)を見れば、彼がバッカス将軍や他の帝国将校(しょうこう)のように皇帝へ忠誠(ちゅうせい)(ちか)っていたことを(あらた)めて思わせる。 グレイはそんなノピアの姿を見ながら、クスッと笑みを()かべた。 それを横目で見たノピアは、表情(ひょうじょう)強張(こわば)らせて立ち上がる。 「何を笑っている?」 ノピアは(しず)かながら威圧的(いあつてき)な態度でグレイに声をかけた。 グレイは何も言わずに、おどけた調子(ちょうし)で彼へ(うす)ら笑いを見せるだけだった。 「だから……何を笑っているんだッ!!!」 そんなグレイ様子(ようす)()えられなくなったノピアは、持っていた剣で斬りかかった。 だが、グレイは(ちゅう)灰色(はいいろ)空間(くうかん)を作り、その中へと消えてしまう。 消えたグレイに用心(ようじん)し、周囲(しゅうい)見渡(みわた)したノピアだったが、彼が(あらわ)れる様子はない。 しばらくすると、ノピアの頭の中に不快感(ふかいかん)と共に声が聞こえてきた。 「ノピア将軍……君は使えるかもしれないな。いざというときのために()かしておくか」 どこからか聞こえてくるグレイの声。 ノピアはその言葉の意味がわからないまま、頭の中に流れてくる不快感を()(はら)うため、(さけ)ぶと、彼の脳内(のうない)に、現在(げんざい)――このストリング城での状況(じょうきょう)が、映像(えいぞう)となって(うつ)し出されていった。 空へと浮かんでいくストリング城――。 アン、マナ、キャス、シックス、クロム、ロミーの姿――。 飛行船で侵入(しんにゅう)してきたクリアとルドベキア、ニコとルー。 目の前でバラバラとなっているストリング皇帝が、機械兵オートマタを(ひき)いている様子――。 そして、ノピアが感じていた取り分け大きい不快感の正体――コンピュータークロエと、傍に立っているグレイとグラビティシャド―2人――。 「な、なんということだ……このストリング城自体(じたい)がコンピュータークロエだったのか……。それと……ストリング皇帝閣下がシープ·グレイの作った人造人間(アンドロイド)だったなんて……」 脳内に流れ込んできた映像を見たノピア。 あまりの衝撃(しょうげき)事実(じじつ)にその場に立ち()くしていると――。 「ノ、ノピア将軍……そこにいるのか……?」 首だけとなったストリング皇帝が声をかけてきた。 ノピアはすぐに皇帝へと駆け寄る。 (くる)しそうに(うめ)くストリング皇帝。 ノピアは、皇帝の最後(さいご)となるであろう言葉を聞いていた。 「ど、どうやら私はここまでのようだ……後を……(たの)むぞ」 「な、何をおっしゃるのです!! 皇帝閣下がいなければ……世界はッ!!」 「君がやるのだ……。私に変わってこの終末の後の世界(ポストアポカリプス)理想郷(ユートピア)にしてくれ。君はマシーナリーウイルスの“適合者(てきごうしゃ)”であり、ただの将校(しょうこう)では終わってはならん男だ……わかるか……ノピア·ラシック……私を失望(しつぼう)させんでくれ……」 ノピアは、そのストリング皇帝の言葉に(なみだ)(たた)えた。 そして、完全に動かなくなった皇帝の側にあった、()()なピックアップブレードを握るのであった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加