26章

1/1
前へ
/40ページ
次へ

26章

()げから復活(ふっかつ)したクロエは、アンの喉元(のどもと)(つか)むと興味深(きょうみぶか)そうにその肥大化(ひだいか)した黒腕(こくわん)を見つめる。 「それにしてもマシーナリーウイルスって、人体(じんたい)にどういう影響(えいきょう)(あた)えているのかしら?」 「さあ、シープ·グレイ(あいつ)に訊けばわかるんじゃない?」 アンを持ち上げて小首(こくび)(かし)げているクロエに、グラビティシャド―がどうでもよさそうに言った。 片手で(ちゅう)へと(かか)げられたアンは、その喉元を掴んだ手を振りほどこうと(ふたた)電撃(でんげき)(はな)とうとしたが、クロエが彼女に向かってテレパシーよる精神攻撃(せいしんこうげき)仕掛(しか)ける。 「ぐッ!? ぐわぁぁぁッ!!!」 アンの脳内(のうない)激痛(げきつう)が走る。 喉が()り切れてしまうかと思うほどの絶叫(ぜっきょう)。 その(さけ)び声と共に、アンの肥大化した黒腕は、次第(しだい)に元の白い機械の腕へと(もど)っていってしまった。 ニコは気を(うし)っているロミーを()いて、泣きながらその場で(ふる)えていた。 マナ、キャス、シックスの3人も、アンが見せた黒腕の力を持ってしても、クロエには(つう)じなかったことに絶望(ぜつぼう)を感じ、その場で立ち()くしてしまっていた。 だが、そんな中――。 ルドベキアはアンを助けようとクロエに斬りかかっていった。 しかし、ルドベキアの斧槍(ふそう)ハルバードは、地面から(あらわ)れた土と(かべ)によって(さえぎ)られてしまう。 それでもルドベキアは、(あきら)めずにクロエへと向かって行く。 幾度(いくど)となく道を(ふさ)いでくる土の壁を破壊(はかい)し、ついにクロエに一太刀(ひとたち)()びせた。 だが、すぐに傷口(きずぐち)泡立(あわだ)ち始め、即座(そくざ)再生(さいせい)してしまう。 「おい、てめえらもボサっとしてねえで手伝(てつだ)いやがれ!!!」 ルドベキアの怒鳴(どなり)り声を聞いたマナ、キャス、シックスの3人は、(われ)に返り、それぞれの力――自然(しぜん)(あやつ)能力(のうりょく)(はな)つ。 火、水、風が(すさ)まじい(いきお)いでクロエへと向かって行き、アンの喉元を掴んでいた手がついに(はな)れた。 ルドベキアはその()(のが)さずに、アンを抱きかかえて、突然ロミーとニコがいる方向(ほうこう)へと走り出す。 「おい、てめえら聞けッ!!! この場から一旦(いったん)退()くぞ!!! クロエ(あいつ)と戦おうなんて思うんじゃねえ!!! 全員()げることだけ考えろッ!!!」 そして、アンを(かた)(かつ)いだまま、ロミーとニコを(ひろ)って、大広間(おおひろま)から出て行った。 ルドベキアの号令(ごうれい)(とも)に、マナ、キャス、シックス3人も、彼らに続いて大広間を出ていく。 その様子(ようす)を、グラビティシャド―は表情(ひょうじょう)(くも)らせて見ていた。 「あの男……ただの人間のくせにどうしてあんなに力強(ちからづよい)いんだろう?」 「それはね。彼が(あい)する(もの)のために動いているからよ」 クロエは、そんなグラビティシャド―とは対照的(たいしょうてき)(うれ)しそうに身を()じらせていた。 「う~ん、でもただの人間(あいつ)とこっちじゃ、(つき)豆電球(まめでんきゅう)くらいの()があるんだよ。そんなちっぽけな存在(そんざい)なのに、(まった)(こわ)がっていないなんて……。ママがあれだけの力の差を見せたっていうのにさ。ホントどうしてだが、理解(りかい)できない」 不愉快(ふゆかい)そうなグラビティシャド―のことを、クロエは赤子(あかご)をあやすように声をかけた。 今のグラビティシャド―ではわからないかもしれないが、そういうタイプの人間もいるのだと。 「そう考えてみると、ルドベキア(あの男)が一番厄介(やっかい)かもしれないわね」 クロエはそう(つぶや)くとコツンと床を()踏んだ。 すると、()れる地面(じめん)から土の土台(どだい)(あらわ)れ、グラビティシャド―と共にその上へと()る。 「じゃあ、追いかけっこを始めましょうか」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加