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7章
帝国の機械兵オートマタをなぎ倒し、ストリング皇帝から逃れようとしたルドベキアたちだったが、あっという間に回り込まれ、その道を塞がれてしまった。
「邪魔だ、どけ!! 俺は今てめえなんかとやりあっている暇はねえんだよ!!!」
「もしかして、君らはアン·テネシーグレッチを救い出そうとしているのかね?」
ストリング皇帝の言葉に、ルドベキアは表情を歪めた。
そして、握っていた斧槍ハルバードを構え直し、後ずさりしている。
「いやいや、当て推量で言ってみるものだな。どうやら図星のようだ」
ゆっくりと距離を縮めてくるストリング皇帝。
その手に握られている真っ赤なピックアップブレードが、歩くたび――振られるたびに音を鳴らしている。
「では、私は君らを始末してから、彼女を処分しに行くとするか」
ルドベキアは思う。
……これからアンのところへ急がなきゃいけねえのに、こいつは簡単に行かせてくれそうにねえ。
どうする!?
どうすりゃいい!?
何が起きているかわからねえが、あいつがヤバくなっているのはたしかだ。
俺があいつを……アンを守ってやらねえとッ!
考え込んでいるルドベキアに向かって、ストリング皇帝は一瞬で間合いを詰めた。
そのあまりに人間離れした速度に、ルドベキアは防御の反応が遅れてしまう。
「ヤ、ヤベェッ!?」
「まずは1人……」
呟きながら2刀ブレードを振り落としたストリング皇帝だったが、突然ガキンッと金属音が鳴り響いた。
「剣の相手なら私がします」
そこには2本の刀で、ストリング皇帝のブレードを受け止めたクリアがいた。
ブレードを受けた彼女は、そのままストリング皇帝を押し返す。
下がらされたストリング皇帝は、少し驚いているようだった。
「お嬢さん。多少腕に自信があるのかは知らないが、私の剣を受けるつもりかね?」
だが、すぐにいつもの落ち着きを取り戻し、親し気にクリアに向かって声をかけた。
クリアはそれには答えず、ルドベキアに背を向けながら彼へ話しかける。
「ここは私が引き受けましょう」
「おい、なに言ってんだッ!? 着物の姉ちゃん1人じゃあいつには勝てねえよ!!! ここ協力しねえと!!!」
「ルド……あなた、アンのことが好きなんでしょう?」
「なっ!?」
知り合ったばかりの――。
しかもこんなときに、そんなことを言われるとは思っていなかったルドベキアは、顔を真っ赤にして反論を始めた。
あんな無愛想な女をなんで俺がと――。
可愛らしさの微塵もないあいつのどこを好きになるんだと――。
そもそも俺は女が嫌いなんだと――。
慌てて言葉を吐き出し続けた。
その様子を見て、ルーがからかう様に鳴いていて、それを笑いながらニコが止めている。
クリアはそんな彼に背中を向けたまま、クスッと上品に笑う。
「ルド、あなたは目つきが悪し、言葉遣いも悪いし、その威圧的な態度も最低ですけど」
「なんか知り合ったばかりなのに、言いたい放題言われてんだけど……」
「アンのことを口にするときに、その目が優しくなりました。それだけで十分わかりますよ」
「うぐぐ……」
クリアにそう言われたルドベキアは、ぐうの音も出なかった。
ただ、表情をいつも以上に歪めているだけだ。
「わかった……。ここは任せるぜ、着物の姉ちゃ……いや、クリア」
ルドベキアは、そう言うとニコとルーを肩に担いだ。
それからちょっと遠回りになるが、別の道で大広間へ行くと言うと、そのまま走り去っていった。
「絶対に死ぬんじゃねえぞ!!! てめえの思っていることが誤解だって、全部終わったら叩き込んでやるからな」
振り返らずにそう叫んだルドベキアと共に、担がれているニコとルーもクリアへ向かって大きく鳴いた。
ルドベキアたちを見送ったクリアは、再び2本の刀を構え、背後から襲い掛かって来ていた機械兵オートマタへ斬り捨てる。
「茶番は終わったかね?」
ストリングはそう言いながら、ゆっくりとクリアへと近づいていった。
その間にもクリアは、残っていたオートマタを斬り捨てていく。
その様子を見たストリング皇帝は、眉をピクっと動かした。
妖しく光る刀。
クリアの剣さばきは見事ものだったが、どうもそれ以外の力を感じる。
「妖の類か。これは少々骨が折れそうだ」
すべてのオートマタを片付けたクリアは、近づいてきていたストリング皇帝と向き合う。
「私の名はクリア·ベルサウンド……。お初にお目にかかりますが、こちらの諸事情によって、あなたのお相手をさせていただくことになりました。と……いうわけですので、誠に申し訳ありませんが、今ここであなたの首を斬らせていただきます」
そのクリアの声に、彼女に握られている2本の刀――小雪と小鉄が呼応するかのように光を発した。
「では、参ります!!!」
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