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臆病な大学生
目が開いた。トンネルの天井が見える。何故、目をつぶっていたんだ?起きようとする。だが出来ない。体が痺れている。痺れ続けている。そして、硬直している。痺れて硬直している。寝転んだ体勢をキープしかでききない。不思議と恐怖は感じない。自分は大体何があろうと恐怖を感じないが。水田はどんくさいと言うが、自分はそうは思わない。自分のペースで生きているだけだ。そう、言うならばマイペースってやつだ。それって遅い感じのイメージだなぁ。「はあ、」溜め息が外界に放出される。「お、起きたか」誰かの声が聞こえる。誰だ?聞き覚えがない。謎の声主が上から覗き込んでくる。トンネルの照明が声主の正体を隠してくる。照明が、正体を、フフフ。「お、笑った」謎の声主が反応する。なんだその赤子をあやす親、みたいな感じは。なんかこの感じやだな。起き上がろうとする。まだ痺れてはいるが、随分楽になった。ぎこちなく起き上がる。謎の声主の正体が顕になる。だが、見えても謎のままだ。緑色の髪、紫の全身タイツ、銀色のベルト、銀色の手袋、銀色のブーツ、そして銀色のマフラー。いかにもな昔の宇宙人だ。どうしよう、何をすればいいのか分からない。相手の宇宙人?も同じようだ。こんなときは、長年の知恵に頼ろう。おばあちゃんが言ってた。『仲良くなりたい人には、挨拶だよ』ありがとう、おばあちゃん。頑張るよ!「こんにちは」静かなトンネルに“こんにちは„が満ちる。「おい、地球での暗いときの個体識別音波は“こんばんは„ではないのか?」た、たしかに。よく分からないけど、言いたいことは分かる。ずっと明るいトンネルにいて、時間感覚が狂ってた。「たしかに、こんばんは」反応が帰ってこない。「そんなに、フレンドリー?に接していて良いのか?俺はお前を撃ったんだぞ」撃った?ああ、そんなこともあったな。そうだ!明確に思い出した!女の人が襲われてて、タックルしたんだ。で、撃たれたのか。「撃たれて平気なの?自分」体を見回しても怪我は見当たらない。「ショックガンは外傷で制圧する物ではない」「ヘエー」段々と気まずさが消えてきた。「で、なんでさっきはタックルしてきたんだ?」タックル?したような、してないような。「したっけ?」「してた。された。」「そう、ごめんね」「いや、この星の文化だ。否定はしない」文化?女性をタックルで奪い合うような、文化だと思われているのか?「違う違う。そんな文化ないよ。ただ、女の人を助けなきゃって」宇宙人は少し驚いたような顔をした。「関係も、利益も無いのに助けたのか?」「だって嫌がってたから」「そうか、地球人は宇宙進出が遅いから繋がりが強いんだな」「まあ、狭い地球の中で今も争ってるけどね」「その分、賢い証拠だ」フォローされた?「ありがと」グウウウお腹がなった。誰のお腹だろう。あっ!自分のお腹だ。「夕飯食べてないしなあ」夕飯はここの探険後に町で食べる予定だった。水田どこだろう。「おい、えーと」「田中って呼んで」「田中、これ食べるか?」宇宙人がピンクの粒を差し出してくる。「え、と。地球人が食べて良いのかなあ」「確かに、安全のために止めておこう」ピンクの粒をポケットにしまう。名前、何て言うんだろう。「名前、」「ああ、言ってなかったな。₶₩₪₣だ。」「え?なんて?」「ああ、聞き取り機能つけなきゃ」宇宙人が耳元の機械をいじる。「クレミタだ」クレミタ。不思議な響きだ。「よろしく、クレミタ君」「ああ、よろしく」 何も起きてない。けど、何か変わった。「おい、田中」クレミタも感じ取ったようだ。「ね、なんか」何となく、立ち上がる。クレミタの背中で隠れてた景色が見えた。そこには、水田と侍?そして、いつの間にか消えた女の人がいた。
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