その後

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 この一連の報告書は、矢内先輩が作成し、それをもとに上層組織がそれをマスコミに向けて発表することとなった。 世間は、この一連の事件の話題で持ちきりだった。 マスコミはこぞって、黒崎愛とセイヤとの兄妹関係を取り出し、まるでマスコミは何も悪くないかのように過去の事も取り出していた。 真犯人についても、容赦なくバッシングしていた。 失踪したセイヤの痕跡が一切見つかっていないことから、おそらくは強力な支援者の存在があるだろうということが、真実のように報道されていた。 私には、その真偽はわからないままだ。 そして、危険薬物のルート、臓器売買のルート、そして、禁忌とされている治療についての話題が、日を追う毎に過熱を増していた。  それを受けて、事態を収拾させるかのように、内閣府からのマスコミへの注意文が通達された。 内容はこのようなものだった。 『今回の一連の事件によって、 危険薬物が蔓延している実態が明らかになったことと、臓器売買が限りなく疑われる実態。 そして、禁忌とされる外科手術が行われたことが明白となりました。 それらは、決して許されることではありません。  ですが、この一連の事件に深く関わっていた人物を殺害したと目されるK氏も、決して許されないことをしました。 しかし、K氏は、幼い頃に妹さんの失踪事件のことで、深く深く傷つき、世間から冷遇されて来た辛い過去を持っています。 彼が世間から冷遇された発端は、間違った情報によるものに他なりません。  そして、天才ピアニストと言われた少女の失踪事件から12年以上が経ち、ようやくその真相が明らかになりました。 これらの一連の事件は、負の連鎖が波及したと言うより他に、適当な言葉が見あたりません。 それは、深い悲しみの連鎖です。 だからこそ、私たちは、被害者も加害者も作らないための、社会を作らなければなりません。 さらに、薬物汚染や人権を無視した行いがない、無責任な情報を流さない社会作りを、安心して暮らせる社会作りを、国をあげて行っていく必要があります。 国民のみなさまの、ご理解とご協力をよろしくお願いします。』 ・・セイヤの起こした事件は、奇しくも、国内に蔓延している問題を提起するほどの大きなものとなった。  そして、コンサートホールの予備機械室にあった、古びた黒い重厚な金庫の中から発見された遺体は、心ある人々が中心となって手厚く葬儀が行われた。 腐敗し、見る影もなく、当時水色だった衣装は、黒くなっていたそうだ。 セイヤの大切な妹は、多くの人に悼まれ、そして、温かく見送られた。 しかし、そこにセイヤは現れなかった。 ・・セイヤは今も、あの足首を持っているのだろうか。
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