その後

8/8
前へ
/108ページ
次へ
橋の下からだと判らなかったが、陸の上は 人混みとお祭り騒ぎでごった返している。 あの目立っていた衣装も、他のきらびやかな色に紛れて区別がつかない。 涙が溢れてくる。 「セイヤ!! セイヤ!!」 もう届かないのか。 お願い お願い どうか届いて。 「セイヤ!! セイヤ!!」 どれだけ叫んでも、周りはお祭り騒ぎを続ける。 いくら探しても、セイヤは見つからない。 「この子はあなたの子どもよ!! 名前は花音(かのん)!! あなたには家族がいるのよ!! 大切な家族が出来たのよ!!」 セイヤは見つからない。 セイヤは現れない。 「セイヤ!! お願い!! 戻ってきて!! 私がついているから、絶対に見捨てないから、だから、お願い!! 一緒に償おう!!!!」 「私の、そばにいて!! 私のそばにいて!! 私のそばにいてよ・・ ・・お願い・・ ・・・・お願い・・ ・・・・・・お願い・・」 息を切らせて、後から追いかけてきたカナデが私と花音を抱きしめる。 「もう、もういいんだよ。 もういいの。 あなたも、花音ちゃんも、そして、彼も、 みんな・・・・」 辺りは途切れることなくお祭り騒ぎを続けている。 「・・もう、行こう・・。」 そう言ったカナデの言葉で、やっと我を取り戻した。 でも、頬を撫でる風の音が、優しく私を呼んだ気がした。 『ミキち。』 と、そう呼ばれた気がした。 もう・・ もう・・・・ もう歩かなきゃと思って、ゆっくりと歩きだした。 だけど、何度も振り返った。 『セイヤ、いつかきっと・・ 待っているから。』 そう、心のなかで呟いた。 そして、きらびやかな街並みの風景の中で、もう一度振り返った。 おわり。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加