70人が本棚に入れています
本棚に追加
展覧会を堪能し、暖かい気持ちになった後、私は奏と別れて、スーパーで買い物をすませて、家路を急いだ。
今日は、私のマンションに、静夜が来る。
静夜の大好きな、コーンとブロッコリーがたっぷり入ったクリームシチュー。そしてオーブントースターで焼き目をつけたバケットをご馳走する予定だ。
それなのに、急に雲行きが怪しくなり、ぽつぽつと雨が振り出した。
慌てて近くのコンビニに入り、ビニール傘を買って、それを差しながら街中のスーパーに向かった。
食材は買えたが、シチューに使う牛乳と、静夜と一緒に呑む予定のクロネコが描かれている白ワインが重い。今更ながら、水分は自宅マンションの近くのコンビニで買うべきだったと後悔する。
それから、雨の中でバス停で73系統のバスを待った。
ほどなくしてバスは来たが、車内は雨のせいもあってか、通常の乗車率を遥かに越えており、私は中見が飛び出ないようにスーパーの買い物袋の持ち手を結んで、それを胸に抱いて手すりも持たずに立ち乗りすることとなった。
それからさらに約40分後、自宅マンションについた頃には、服はもうべゃべしゃ。ひどい疲労感だった。
スマホから分三和音の着信音が鳴る。
静夜からのメッセージだ。
『ミキち、ごめん。道に迷った。少し遅れる。』
静夜は、私の事をミキちと呼ぶ。
最初はミキちゃんと呼んでいたのに、それが簡略化されて、ミキち。になった。
最初のコメントを投稿しよう!