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「ごめん。
お待たせ。」
そう言って両手を合わせて謝る静夜の仕草は、とてもかわいい。
細身の体型で、バイオリニストらしくすべすべの手なのに、肩幅はとても大きい。
バイオリンを構えたときの真剣な表情と違い、それ以外の時の表情は、とても穏やかだ。
「もうシャワー浴びたの?
僕もびしょびしょでさ、先にシャワーあびてもいい?」
そう言った時の表情は、いつもの演奏会後の、穏やかなものではなかった。演奏会後でしかも雨に打たれたことによる疲労感が漂っていた。
静夜は私の部屋に入り、玄関の鍵を閉めた。
そして、服を一枚づつ脱ぎ捨てて、
「洗濯機、借りるね。」と言って、下駄箱の横にある洗濯機に着ていた服を入れ込んでいった。
真っ裸になった静夜は、前も隠さずにそのままの姿で歩きだし、扉を開けたままでユニットバスのシャワーを浴び始めた。
静夜は、いつもより長めのシャワーを浴びていたが、途中から身体の動きが止まり、シャワーからの湯水の音しか聞こえなくなっていた。
心配になって覗いてみたら、浴槽に湯を張り、そこに口までを沈み込ませていた。
「ねえ、静夜、大丈夫?」
疲れからか、静夜は少し浴槽で眠っていたようだ。
私のその言葉に気づいて、静夜は私を見て、
「ねえ、ミキち、一緒に入ろう?」
と言う。
今は夕飯の準備中なのに、その誘いを断れない私がいる。
「もう。」
そう言いながら、私も服を脱いで、一緒に浴槽に浸かる。
ユニットバスは、程よく狭く、お互いの肌が密着する
「髪、洗ってあげるね。」
そう言った静夜は、浴槽の詮を抜き、排水溝に吸い込まれていくお湯の減りを軽減するかのように、さっき自分で洗ったばかりの私の髪の毛にシャワーの湯水をかけて、私の背部から私の頭部を優しく洗い始めた。
なんて気持ちが良いのだろう。
されるがまま、シャンプーの後でトリートメントをしてもらった。
その後で、静夜が私の身体を洗い始める。
私以外の他人が触れたことがない部分に、静夜が優しく触れる。
もう、身体の火照りが止まらない。
いつまでそうしていたのだろうか。
長めのシャワーは、私と静夜の身体を心地よく洗い流した。
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