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着いた先は、想像していたよりも大きな和風邸宅だった。
邸宅の大きな正門は、すでに黄色地に黒字でkee pout 立ち入り禁止と書かれているテープで封鎖されていた。
その封鎖テープを避けるようにして正門をくぐる。
横目にみえる見事な和風建築の庭が、壁の向こうにみえる山並みとリンクして、見事な借景の美を醸し出していた。
客間は、今すぐにでもサロンコンサートが出来そうなほど広く、そして、いくつか並んだテーブルとソファの向こうには、スタンウェイのピアノが見てとれた。
壁は、水色と黄緑色とで刺繍したような、見事な洋風の唐草模様の壁紙が施されている。
それから、ピアノ用に床張りされていることが、歩いた音だけで解る。
ここの主人は、自らが音楽家か、もしくは相当の音楽好きと言うことがここから伺い知れる。
遺体は、その客間にあった。
客間の壁側とソファとの空間は約70㎝。その空間に、ソファの背面にもたれ掛かるようにして、絶命していた。
壁には、クリムトの絵が掛けられている。
豪奢な額に収められたその絵は、まるで全てを知りながらも沈黙を守るように、私たちを見つめていた。
そのちょうど真下の床に腰を落とし、足を投げ出し、天を仰ぎ見るように目を見開いている。
生きようと必死でもがき、強い筋緊張の後で、急にそれが事切れた様に、筋肉が弛緩したのだろう。
しかし、表情は苦痛で歪んだままだった。
口腔鼻腔からの分泌物がみられ、見た目と臭いから、尿と便によってズボンが汚れているのが解る。
首筋には、細い紐で縛られた後があった。
私の身体全体を、この風景と異臭が圧迫する。
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