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嗚咽混じりの声で彼女が言った内容は、こうだった。
金浦亮平、元の名を、伊崎亮平と言う。20歳の頃に強盗事件を起こし、禁固刑にて一年間刑務所に入っていた。出所後まもなくして、ホームヘルパーの仕事を始めた金浦は、訪問先で知り合った当時76歳だった身寄りのない金浦順子と養子縁組をしたことにより、伊崎亮平は金浦亮平と改名する。まもなくして、金浦順子は肺疾患で死亡した。
金浦順子は末期の肺疾患を患い、薬剤による疼痛コントロールをしていたが、その死因に不可解な点は見つかっていない。
その後、金浦順子の豪邸を広大な別邸も含めて手に入れた金浦亮平は、別邸であるものを作るためのプラントを作成した。
いわゆる、危険薬物を作るための植物を栽培するためのプラントだ。
最初のきっかけとなった、種の入手や栽培のノウハウは、どこで手に入れたのか。
それと目される限り無く黒に近い組織の存在は、こちら側も把握しているが、その証拠としての接点は、今のところ皆無だ。
ともかく、プラント計画は、金浦亮平が思っていた以上に順調に進んだ。
そこで、すべてを隠蔽するための、そこの管理者が必要だった。
いわば、表向きの自分の実業家として地位を確立するためにも、影になる存在が必要だった。
そこで目をつけられたのが、児島尚子だった。
金浦亮平は、事の他クラシック音楽が好きで、邸宅のあのスタンウェイのある部屋に演奏家を呼び、そして10人足らずの聴客を集めてサロンコンサートを主催していた。
その演奏会が終わった後で、あるパーティーをしていたそうだ。
児島尚子は、もともとはサロンコンサートのプランナーとしてあの邸宅に出向いたらしい。
容姿もスタイルも金浦亮平好みであったことから気に入られ、何度もサロンコンサートを企画したそうだ。
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