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「あの」
いつものようにフラフラしていたら
後ろから声がした。
多分 時間は夜。
灯りも少ない 暗いアスファルトの上
私は振り返った。
「大丈夫ですか?」
巡回中の私服警察官・・・では、なさそうだ。
霞んだ色のコートを着た 見た目は・・・私と同じぐらいの男の人?
首から一眼レフカメラを下げて、両手に構えている。
そこにでもいそうな顔つきだ。
「私が見えるんですか」
私は言葉を発する。
感情なんて 遠い昔にどこかに置き忘れてしまった。
起伏のない 文字羅列。
彼は私の発言に戸惑ったようで、瞬きを不自然に繰り返す。
「・・・あ・・・はい・・・」
やっと首をふれたのは、10秒後くらいだった。
「あの・・・お家はあるんですか?」
「帰る場所はありません」
機械的に答えた。
「・・・そう・・・ですか。」
聞いてはいけない質問をしたと思ったのか、彼はうつむいてしまった。
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