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「あ・・・あの・・・」
無言で立ち去ろうとした私に、彼の声が届く。
「・・・もしよろしければ、僕の家 来ませんか・・・?」
一体何を言っているのだろう。
赤の他人 それも私のようなものを初見で招くとは
通常の判断ではなさそうだ。
「・・・あ、も、もちろん、無理にとは言いませんっ・・・。ただ、今日は今週一番の冷え込みだって言うから・・・」
彼はしどろもどろになって一人芝居をしているようだった。
まぁ いい。
彼がどんな人間であろうと
私には もう 恐れるものはない。
なんて無用な心配をしたのだろう。
私は無表情で彼に近づく。
何かされると思ったのか、彼は「ひっ・・・」と小さく声を出して、後ずさる。
「案内して下さい あなたの家に 」
機械的な答え方だった。
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