10人が本棚に入れています
本棚に追加
ボクの存在は誰にも気づいてもらえていないようで、唯一の視線の彼女はゆっくりと顔を振った。
「じゃあ……気が向いたら遊ぶから、もう解放してあげて。人間の興味なんてまたすぐなくなるから」
「やだよ、もっともっと見て欲しい」
「……私はちゃんと見えてるから」
ボクは物心ついた時からこの世に存在していない。
記憶にあるのは暗い部屋と沢山のもの。
いろんな匂いのする中で、時折食べ物があって痛いことばっかりだった。
終いには動けなくなって、話せなくなって、ご飯も居場所もなくなって、気が付くとこの公園の草に囲まれていた。
虫だけがボクの存在を認めてくれることが嬉しくて、このまま暖かいここで過ごせたら……なんて思っていたのに。
『見てみて! ガイコツのオモチャ!』
そうして始めて太陽を見た。
最初のコメントを投稿しよう!